色々許せちゃう多能ぶり! スズキ・イグニスへ英国試乗 オフロードタイヤなら悪路も得意
動力性能は平均程度 素晴らしい燃費
動力性能は、都市部を前提にするシティカーの平均。特に速いわけではなく、0-100km/h加速に12.8秒を要するが、これで構わないだろう。高速道路の合流で、走行車線の速度へ合わせるのに苦労するほどではない。高速走行は、イグニスの得意分野でもないが。 1.2L自然吸気エンジンは、軽くは吹け上がらない印象だが、低回転域で5.1kg-mをアシストするマイルド・ハイブリッドの効果は明らか。発進停止の多い区間で、エンジンを過度に気張らせる必要はない。 5速MTのシフトレバーは軽く倒せ、ストロークが短く扱いやすい。ブレーキも漸進的に効き、停まる直前の制動力を調整しやすい。 2017年の登場当時は、やや洗練度の低さが目立った乗り心地ながら、2020年のフェイスリフトで改善。とはいえ滑らかなアスファルトでも、ピタリと落ち着いているわけではない。特にリジッドアクスルの四輪駆動では。 舗装のツギハギの多い区間では、初期型より快適といえるものの、低速域で揺れが目立つ。速度域が上昇すると、お手頃なこのクラスなりに、車内のノイズも小さくはない。 カーブが連続する区間では、ゆったり身をこなし、スポーティな印象は得にくい。少なくともグリップ力は高く、姿勢制御も一定の敏捷性を叶えられる程度に締まりはある。オフロードもこなすコンパクトSUVとして、充分に納得できる範囲だろう。 燃費は素晴らしく、荒っぽく運転しても18.0km/L前後は難しくない。前輪駆動を丁寧に扱えば、23.0km/Lも夢ではない。
実は驚く悪路性能 便利で好感を抱ける小型車
四輪駆動のイグニスなら、オフロードタイヤへ交換するのも一興。ゴツゴツした岩場を難なく進み、急勾配をスルスルと登り降りする能力へ驚けるはず。ギア比が低い1速に入れたまま、83psの最高出力をしっかり使い切れる。 フロントタイヤが滑ると、ビスカスカップリングを介して、リアタイヤへトルクが割り振られる。最低地上高は180mmあり、ホイールベースも前後のオーバーハングも短い。電子制御のヒルディセント・コントロールまで備わる。 英国価格は、エントリーグレードで約1万8000ポンド(約360万円)から。装備は充実し、衝突被害軽減ブレーキや車線維持支援、エアコン、LEDヘッドライト、プライバシーガラス、16インチ・アルミホイールなどが標準で付いてくる。 残念なことに、英国ではスズキ・ジムニーを乗用車仕様で購入できない。その代替になるわけではないものの、いざという時に威力を発揮する四輪駆動の小さなSUVとして、英国では唯一といえる選択肢にある。 フィアットは、パンダ 4x4の生産を終了した。予算に余裕があるなら、ダチア・ダスターという魅力的な選択肢もあるが、こちらは600mm以上長い。 他にはない個性と優れた実用性、価格価値の高さはイグニスの明らかな強み。多様な路面へ対応でき、便利で好感を抱ける、稀代のコンパクトカーだと思う。 ◯:素晴らしい車内パッケージングが生む空間と実用性 見た目と同じくらい運転も楽しい 四輪駆動システムで驚くほど悪路に強い △:インテリアの品質は、欧州製モデルへ明確に劣る 低速域でやや粗い乗り心地
スズキ・イグニス 1.2デュアルジェット・ハイブリッド SZ5 オールグリップ(英国仕様)のスペック
英国価格:1万9695ポンド(約394万円) 全長:3700mm 全幅:1690mm 全高:1720mm 最高速度:165km/h 0-100km/h加速:12.8秒 燃費:18.5km/L CO2排出量:121g/km 車両重量:940kg パワートレイン:直列4気筒1197cc 自然吸気+電気モーター 使用燃料:ガソリン 最高出力:83ps/6000rpm 最大トルク:10.9kg-m/2800rpm ギアボックス:5速マニュアル(四輪駆動)
マット・ソーンダース(執筆) マーク・ティショー(執筆) 中嶋健治(翻訳)