「アイスクリームの販売数」と「水難事故の発生数」に関連性!?…ボンヤリしているとだまされる〈統計のまやかし〉【経済評論家が解説】
因果関係には十分な注意を払おう
「アイスクリームが売れる日は水難事故が多いから、アイスクリームの販売を禁止しろ」というのは、馬鹿げています。アイスクリームが売れることが水難事故の原因となっているわけではないからです。 A氏とB氏が似ていたとしても、A氏がB氏の親だとは限らないわけです。子どもかもしれないし、きょうだいかもしれないし、赤の他人が偶然似ているだけかもしれないからです。 因果関係の話は重要なので、別の機会に詳述することにしましょう。
前年比は便利だが、季節調整がベター
統計では、前年比が頻繁に用いられます。2月のチョコレートの売り上げを1月と比較しても「バレンタインデーで売れただけ」なので、意味がありません。それなら、前年の2月と比較して今年の売り上げが好調だったのかを判断すべきだからです。 しかし、前年比の数字も注意が必要です。昨年8月にオリンピックがあったとすれば、今年の8月のテレビの売り上げは前年比がマイナスになるはずですが、それを見て「テレビの売り上げが冴えない」などと考えるべきではありません。 そうした誤解を避けるためには、前年比よりも「季節調整値」というものを見るべきなのですが、季節調整値の説明は長くなるので、これも別の機会に詳述することにしましょう。
グラフにも要注意
グラフは便利です。統計の動きが直感的に理解できるからです。しかし、グラフを見る際にも注意が必要です。 下のグラフを見て、いちばん成長している企業はどれだと思いますか? A社:1から2に100%増加 B社:10から19に90%増加 C社:10から18に80%増加 上記から、正解はA社です。 直感を信じるのは危険だということがおわかりいただけたでしょうか。
統計の作り方にも要注意
「米国軍人の死亡率は米国民の死亡率より低いので、米軍は安全な所だ」といわれても、真に受けてはいけません。米軍には高齢者が少ないからです。「20歳から60歳までの米国国民」と比べないと、米軍が安全な所か否かは判断できないのです。 会社員の配偶者が無職だとします。配偶者がパートで働き始めると、一家の収入は増え、家族が豊かに暮らせるようになります。「わが家の労働者1人あたりの収入が減って悲しい」などと嘆くことはないはずです。 しかし、日本経済にかんしては「わが国の労働者1人あたりの収入が減少していて悲しい」と考えている人も多いようです。専業主婦(主夫)がパートで働き始めた家が多いのかもしれないし、定年後の高齢者が働きはじめた家が多いかもしれないのに。会社員とそれ以外に分けて統計を作らないと、誤解を招きかねない、ということですね。 もうひとつ。 ビジネスマンにホテルの評判を聞いたところ、1番評判のいいホテルと1番評判の悪いホテルが同じでした。こんなことがありうるのでしょうか? これはありうるのです。該当の地域にすごく大きなホテルと小さなホテルしかなければ、「気に入ったホテルは?」にも「失望したホテルは?」にも、大勢の客が回答する大きなホテルが得票を集めるからです。「回答者の何%が気に入ったか」という比率で見なければいけませんね。