北朝鮮を30年以上調査・分析 公安調査庁の調査官に聞く北朝鮮の最新事情とは?
■“情報のプロ”公安調査庁の調査官 北朝鮮を30年以上分析
公安調査庁──国内外の様々な情報の調査・分析を行う「情報のプロ」集団である。法務省の外局として存在しており、そこで働くのは特殊な訓練などを受けた公務員たちだ。 日本テレビが取材をしたのは、公安調査庁で北朝鮮の調査・分析を30年以上行ってきた瀬下政行調査官。今回は、調査官ならではの視点で見る北朝鮮の最新事情について話を聞いた。 (社会部 小林大将)
■“調査官の目”北朝鮮の報道画像を分析
まず瀬下調査官が見せてくれたのは、北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」(2024年9月21日付)に掲載された1枚の写真。整えられた区画に、塗り立てのペンキがまぶしい住宅がいくつも建築された風景が写っている。 記事の内容は、北朝鮮政府が新築した住宅を農村部の住民へ引き渡したことを報じるものだという。瀬下調査官によると、この報道には、経済制裁による北朝鮮の経済悪化を背景に、国民が抱える不満を抑える狙いがあるという。 一方、こうした報道からは北朝鮮が“意図しない”内部事情が垣間見える場合があるというのだ。
■農村部の新築住宅に煙突 ガスや電気は不通か?
瀬下調査官は写真のある部分に注目した。 瀬下調査官 「屋根にエントツがついていて、おそらく炊事場につながっている。練炭などで火をおこしていて、ガスは通っていないのではないか」 住宅の屋根に立つ煙突は、住人らがガスを使わずに火をおこして炊事を行っていることの証左ではないかという。 さらに、写真には電柱や電線も見当たらないことに気が付く。電線は地下を通っている可能性も否定できないが、住宅の軒先に電力を必要とするような電気設備もなく、日常的に電力を使用する形跡は見当たらない。 瀬下調査官によると、この写真からは北朝鮮の農村部では未だに電気・ガスといったインフラの整備が進んでいない可能性があることが読み取れるという。
■住宅1軒に2世帯 住人同士による相互監視システム
次に注目したのは住宅の庭。 瀬下調査官 「庭が半分に仕切られている。北朝鮮ならではの特徴です」 庭のあたりをよく見てみると、確かに柵のようなものでスペースが区切られているのが分かる。北朝鮮ならではの特徴とはどういうことなのか? 瀬下調査官 「北朝鮮当局の施策で、1軒に2世帯を住ませることで互いに監視ができるような構造になっている」 同じ屋根の下に住む住人が互いに監視をしあう――。瀬下調査官によると、北朝鮮では治安を維持するための相互監視システムがあることが分かっていて、今もそのシステムが存在している可能性があると指摘する。