北朝鮮を30年以上調査・分析 公安調査庁の調査官に聞く北朝鮮の最新事情とは?
■突如現れたジュエ氏とみられる金正恩総書記の娘
続いて金正恩総書記の娘について話を聞いた。今では北朝鮮の報道でその姿を見ることも珍しくはなくなったが、そもそも、この少女についてはどのようなことが分かっているのか――。 瀬下調査官 「2022年の11月に初めてその姿が公開されましたが、北朝鮮は一貫して彼女が“金正恩の愛する御嬢様”であること以外、名前や年齢などの情報は一切出していない」「2013年に訪朝したアメリカの元NBA選手が金正恩に会った際、赤ちゃんだった娘を“ジュエ”と紹介されたそうです」 北朝鮮ではこの少女について、金正恩総書記の娘であること以外は名前すらも公にされていないというのだ。瀬下調査官によれば、こうした情報を公開しないことによって人物の神秘性を醸成し、国民の関心を集める狙いがあるのだという。
■少女は後継者なのか?初登場シーンに隠された狙いとは
将来、この少女は金正恩総書記の後継者になるのだろうか――。 瀬下調査官 「それについては研究者の間でも議論が続いています。この少女が金正恩の隣に頻繁に登場している様子を見ると、少女が後継者になり得る有力な存在であることは確かです」 金正恩総書記には後継者となる長男がいるという説もある。しかし、この少女の登場により、識者の間では見方に変化が出てきているという。では、少女が後継者となる可能性を示す根拠はあるのか?瀬下調査官は少女が初めて登場した報道内容について振り返る。
瀬下調査官 「彼女の最初の登場がICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射の時ですよね。これは、彼女が金正恩からミサイルという革命に重要な武器を“受け継ぐ者”であるというストーリーを作っているのではないか」 およそ2年前、北朝鮮国営の「朝鮮中央テレビ」で、北朝鮮のミサイル発射場に金正恩総書記と“その娘”が出向いたと報じられ、突如現れたその存在に世間が大いに驚いたことは記憶に新しい。 瀬下調査官は、金正恩総書記が娘のお披露目の場としてミサイルの発射場を選んだことについて、将来、彼女が権力を継承することに説得力を持たせるような狙いがあったのでは、と指摘する。
■公安調査庁の仕事 「情報」で日本の安全を守る
公安調査庁では、このような北朝鮮の公開情報から得た情報などをもとに、北朝鮮の内部事情の調査・分析を続けている。 瀬下調査官 「情報の中には、時々彼らの中の思想のようなものが垣間見えることもあるし、発信しているメッセージの主張、本音をうかがわせる部分もあります」 公開情報の行間を読み、その真意を分析する。閉鎖的な体制をとる北朝鮮についてはこうした公開情報の分析が特に重要になるが、その情報にはフェイクが含まれている場合もあるため、慎重を要する作業になるという。 今後、緊迫する国際情勢の中で日本はどう立ち回るべきなのか。こうした国内外の情報分析は、ますますその重要度が増すのではないだろうか。