ハリケーンでかく乱される米経済指標:FOMCや大統領選挙にも影響
FRBは11月に0.25%の利下げ実施か
10月雇用統計発表の翌週になる11月6・7日には、FOMCが開かれる。雇用統計は、FOMCでの金融政策決定にも影響を与えるだろう。9月18日のFOMCでは、0.5%の大幅利下げが実施されたが、10月上旬に発表された9月の雇用統計で、雇用増加数が事前予想を大きく上回ったことから、先行きの利下げペースは鈍るとの見方が浮上し、これが長期金利の上昇とドル高を促した。 10月29日に発表された9月の求人件数は、2021年1月以来の低水準まで低下した。求人件数は過去2年間、減少傾向を辿っているが、今回の統計では幅広い業界での減少が示された。他方、9月のレイオフ件数は2023年1月以来の高水準まで増加した。自発的離職者の割合である離職率は低下し、新しい職を見つけることが難しくなっていることが示唆された。 金融市場は、11月6・7日のFOMCでは0.25%の利下げを予想する向きが多い。11月1日の10月分米雇用統計が予想よりも大きく下振れれば、0.5%の利下げ観測が浮上するだろう。ただしその統計は、ハリケーンやボーイングのストの影響で歪められており、そこから経済の実態を正確に読み取ることは難しい。 他方で、雇用統計が予想以上に上振れる場合でも、それを受けて米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを見送れば、長期金利が一段と上昇し、金融市場と経済を混乱させかねない。この点から、11月6・7日のFOMCでは0.25%の利下げが実施される可能性が高いと見ておきたい。 (参考資料) "At a Pivotal Moment, U.S. Economic Data Will Be a Mess (米経済指標、肝要な時期に混乱か)", Wall Street Journal, October 29, 2024 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英