パリのLVMH新施設で細尾とZOZOネクスト、東京大学研究室による特別展が開催
別のフロアでは、シルクと和紙の織物で作られた現代的な茶室「織庵(おりあん)」を展示。空間を囲うことで、人々が寄り合う場を形成していた茶室のルーツに立ち返り、それを現代建築における文脈で再解釈している。細尾社長によると、今回パリで展示される全ての生地はまだ研究段階だが、最終的には商業用としての可能性があると話す。色が変わる生地については、ファッションデザイナーからも好反応だったという。
会場はLVMH メティエ ダールの新施設
今回の会場は、LVMHが今年始めにオープンした5階建ての店舗スペース。施設内には、オフィスやショールーム、イベントスペース、素材図書館を併設する。イベントスペースでは、LVMHに関わるクリエイターによる最高峰のなめし革やエキゾチックレザー、貴重な繊維、メタルワークを体感することができる。同社は業界と一般消費者のため、この施設を通して素晴らしいクラフツマンシップと卓越した製造技術を公開することで、クリエイターの活動を後押しする。
1688創業の細尾、大阪万博での一大プロジェクトを控える
細尾は1688年に創業し、着物や帯の生地を扱う専門店として歩んできた。2010年には、約9000本の経(たて)糸を張ることができる幅の広い織り機を独自で開発。紙や金箔、LEDといった異素材を織り込む技術を実現し、環境条件の変化に反応する特殊な生地を生み出した。そしてインテリアデザインを中心に、高級自動車の内装やテレジータ・フェルナンデス(Teresita Fernandez)ら現代アーティストとのコラボレーションなどを仕掛け、複数の市場を開拓した。初の海外顧客はアメリカの建築家、ピーター・マリノ(Peter Marino)で、「ディオール(DIOR)」のブティックの特別な生地をオファーされ、今では「ブルガリ(BVLGARI)」のホテルなどにもディスプレーされている。
細尾は2万パターンものアーカイブを保有しているが、今後も新しいテキスタイルの開発に注力し、才能あるクリエイターとコラボレーションなどを行い、「未来に向けて新しい可能性を切り開いていきたい」という。現在は年に15~20種の生地コレクションを発表し、毎年4月に行われるミラノ・デザイン・ウイークに参加している。
また、これまでで最大のプロジェクトの一つとして控えているのが、25年4月に開幕する「2025年国際博覧会」(大阪・関西万博)の未来型パビリオンの外幕のラッピングだ。新しい3Dマッピングのソフトウエアを開発し、7000㎡の伝統的な西陣織の錦を、絹ではなく、風雨に耐えられるようにコーティングされたポリエステルで表現した。「私たちにとって、大きな挑戦になる。これは普通なら不可能なことだから」と細尾社長は期待する。