【島田順子さんメッセージ4】パリに住み始めたころ大枚はたいて買った靴、修理を重ね履き続けています
人生のほとんどをフランスで過ごしている島田順子さん。フランスの人と日々の関係を紡ぐ中で、気づき、共感し、ときには違いを実感し、馴染んできた、ものの考え方やふるまいを、改めて見つめます。 【画像一覧を見る】 【島田順子さんメッセージ3】フランス社会では熟成した女性が好まれ、年齢は問題ではないからの続きです。
自分をよく知っているからおしゃれが身についている。
さまざまな場面で、自分らしさを大事にしているのもフランス人の特性。何事においても基準となるのは〝自分〟です。それは他者との比較ではなく、唯一無二の芯を持っているからできること。 「人と同じことをしていたら素敵にならない、とわかっているんでしょう。それも『人と違うことをしなきゃ』と頑張るのではなく、自然とそうしている。さっき自己主張が強いと言いましたが、子どもの頃から自分を持つことを教えられるから、そうなるのではないでしょうか。そこに他者は介在しない。だから大人になっても自然と自分の意見が備わり、それを主張できるんだと思います」 その常識は結婚においても同じ。フランスの離婚率の高さは、自分に正直という性質も影響しています。自分を大事にしているから、一緒にいられないとなれば離婚を選ぶ。子どものことを考えて思いとどまる選択はあまり考えられません。もちろん子どもは成人するまで両方の親の家を行き来すると法律で決まっていますが、子どもも一人の人間として捉えられているので、子どもが可哀想というような社会的抑圧は少ないといいます。 「おしゃれに関しても、フランスの人は自分のしたいファッションをしています。世間の目や、これから会う相手の好みとかはまったく関係がない。褒められると素直に喜びますが、媚びはしないし、自分が自分でなくなるような服は着ません。みんな自分をよく知っています」 だから一度気に入って自分に似合うものだと認識すると、長く愛用し続ける。そういうこだわりを持ち、ものを粗末にしないのが彼らの美徳です。順子さんにも似たようなところがあるといいます。 「たとえば『J.Mウエストン』の靴が好きで何足も愛用しているのですが、パリに住み始めて大枚はたいて買った最初の靴を、今でも修理に修理を重ねて履き続けています。すると『いつもあの靴を履いている人』と認識されていく。 ケンゾー(高田賢三さん)に『順子は会うといつもその靴を履いているよね』とよく言われました。磨いたり繕ったりとメンテナンスをして、足に馴染んだ自分だけの一足になっていくと、愛着が湧いてますます大事にする。それがおしゃれの核になっている気がします。彼らは自分らしいものを知っていて、なおかつそれを自分だけのものへと育てていくから、その人らしいスタイルが生まれておしゃれになっていくんじゃないでしょうか」