「どれだけ儲かるの?」探知機でレアカード判別も…オタクを餌食にする「転売ヤー」の正体
推しのグッズや限定アイテムが買い占められ、フリマアプリなどで高額で売りに出される。その背景にいる「転売ヤー」に密着取材を行い、転売の最新事情に迫ったルポ本『転売ヤー 闇の経済学』(新潮新書)が話題だ。 ■【画像】さっそく転売が行われた「転売本」に著者も苦笑■ 旬の情報をいち早く嗅ぎつけアイテムを買い漁り、高額で売り飛ばすことで利益を得る「転売ヤー」と呼ばれる人たち。スニーカーにTシャツ、ウィスキーに高級時計まで、今やありとあらゆるアイテムが「転売」のターゲットにされている状況だが、同著を執筆したノンフィクションライターの奥窪優木氏は「世の中から転売がなくなることはない」と断言する。ネットでは“憎き存在”として目の敵にされている彼らはいったいどのような人たちなのか、奥窪氏に話を聞いた。
■4時間1万円の並び屋バイトから、金属探知機駆使のハイテク転売まで
「転売のレベルによってさまざまですが、転売ヤーの一番底辺とされるのが“並び屋”と呼ばれる人たちで、普通の主婦や学生、ウーバーイーツ配達員などのギグワーカーが転売組織が募る日雇いアルバイトに応募し、商品を買い漁っています。彼らはSNSで“4時間で1万円”程度の日当で集められ、家電量販店などの限定商品の発売日に並びます。 そうして転売組織に商品が集められますが、その行為によって本来欲しい人は商品が購入できなくなってしまう。“並び屋”である彼らは転売行為に加担することで社会に迷惑をかけているというところまでは意識をしていないように思います。時給にすれば2500円ぐらい稼げますから、割のいいバイト気分という印象を受けました」(奥窪氏、以下同) 同著は、実際に転売を行う現役の“転売ヤー”複数名に密着取材して書かれており、その実態は「並び屋」のような末端の転売ヤーから、大規模な転売を行う組織的な外国人グループまでさまざま。 「ポケモンカード」の章では、未開封のポケカ1200パックに金属探知機を当て、アルミコーティングが施されているR(レア)以上のランクのレアカードを仕分けるハイテク手口まで明かされており、日々進化している「転売」の手法に驚かされる。 「今回取材したうちの一人は、玩具業を買収し『ポケカ』の転売を行う人物でした。卸値で数千パックものカードを仕入れをし、金属探知機などを使ってそれら大量のパックの中からレアカードだけを引き抜き高額で売り飛ばすんです。そのうえ、レアが入っていないハズレの未開封パックはゲームセンターに流すといった無駄のない手段を行っていました」 実際にどれだけの利益が出ているかについて、この転売ヤーは同著で「1ボックスにつき平均5000円ほどの利益が出る」と明かしている。『ポケカ』の転売はかなり手堅い実入りがあったようだ。 目次ではその他、「羽生結弦グッズ」に「ディズニーグッズ」など、ファンの人たちが“買えなかった悔しさ”を思い出しワナワナするような見出しが並び、その手口が細かく紹介されているが、奥窪氏が語るところによるといずれの転売も「けっこう儲かる」という。 たとえば、一時期はどのショップでも購入できなかった「プレイステーション5」は、前述した“並び屋”を使っての買い占めが行われた例のひとつ。同著に登場する当時大学生だった男性は、LINEのオープンチャットで見かけた求人募集から「PS5」の転売に参加し、わずか1時間で1万円の報酬を手にした。これをきっかけに彼はズブズブと転売の魅力に取りつかれていき、最終的に月収35万円を稼ぐほどの転売ヤーになっている。 「やはり稼げることでこれだけ多くの転売ヤーが生まれ、それで社会問題にまで発展していると言えます。海外の大きい組織になればなるほどビジネス感が強くなっていきますが、個人で転売を行っている人に関しては、一方で“ゲーム性”を楽しんでいるような側面もある。今回取材したPS5の転売ヤーだった彼のように、自営業者としての快感や達成感を得て、商売の魅力にのめり込んでいった人は少なくないでしょう」