じつは、ほとんどが1回限りの命…衛星時代の今も、はるか上空へ放たれる「気球」。伝えてくる現象「じつに、リアル」だった
さまざまなラジオゾンデ
レーウィンゾンデは、気球の位置を追跡できるようにしたラジオゾンデで、位置変化から高層の風向・風速を観測できます。 GPSゾンデは、カーナビで使われるようなGPS(全地球測位システム)を用いて気球の位置を追跡し、高層の風向・風速を観測します。これらの観測は、明日や明後日の天気予報の対象となる、高・低気圧(総観規模のスケールと呼ばれます)の状況をと らえる役割を担うことから、世界中で同時刻ーー世界標準時の0時と12時(日本時間の9 時と21時)ーーに、世界各国の約800か所で実施されています。 なお、実際に気球を地上から飛揚させる時刻は、その時刻の30分前とするよう定められています。これはゾンデ気球が、毎分約300mの速さで上昇するので、30分後には、10kmほどの上空の大気を観測できるようにするためです。 また、上空の風が強い場合には偏西風に流されて、観測所から数十km、ときには100 kmも離れた位置まで運ばれることがありますが、位置の特定が難しいため、観測所の上空のデータとして扱われます。
高層天気図
今回ご紹介したラジオゾンデからは、高層の風向・風速、温度、湿度の情報が得られ、気圧から高層天気図の気圧配置が得られます。 図「高層天気図の見方」は、高層天気図の見方を説明するために300hPaの高層天気図を簡略化して表したものです。矢羽根が風向・風速を表しており、▲の印1個は50ノット、長い線1本が10ノット、短い線1本が5ノットの風速を表しています(1ノットは約0.5 m/s)。 また、図中の等高度線は、気圧が300hPaとなる高さが等しい地点を結んだものです。この線は慣れないと意味がつかみづらいかもしれません。続いて、この高層天気図の読み取り方をご説明しましょう。 * * * 後半は、高層天気図の読み取り方についての解説をお送りします。天気予報の見方が変わるかもしれません。 ---------- 図解・天気予報入門 ゲリラ豪雨や巨大台風をどう予測するのか 図解・気象学入門 改訂版 原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 気象予報の話を中心に、気象現象の原理に迫る『図解 天気予報入門』。一方、気象にまつわる素朴な疑問から、気象と天気の複雑なしくみまで、その原理を詳しく丁寧に解説した『図解 気象学入門』。どちらも「しくみがわかる」入門書です。もちろん、2冊読めば、さらに理解が深まります。 ----------
古川 武彦\/大木 勇人