いま中国人が日本の“受験戦争”に参戦する理由とは?「半分は高校進学できない」体育中も教科書手放さず…“勉強漬け”中国教育の現実
日本で中高一貫校合格を目指す
だからこそ、子どもを連れ、一家揃って日本に来た陳さんが言っていたのだ。 陳さん: 小学校に入った子供が長い時間勉強したくないことは分かっていました。 日本で中高一貫校に合格すれば気持ちが楽になります。(勉強以外にも)たくさんのことができるようになります。 とはいえ… 立くん: 大阪の2番目の学校はどこ? 陳さん: 僕にもわからないよ。後ろをみればいいよ。 成績について語りあう、陳さんと立くんは、なんだかとても楽しそうだ。 陳さん: きのう、前回の月間テストの成績を確認したよ。 立くん: どのくらいだった? 陳さん: 全体の偏差値はやっぱり58だった。 ちなみに、立くんが通うトップクラスの進学塾内での「偏差値58」はもう少しで、関西の有名進学校が狙えるレベル。 陳さん: 今回は算数が割とよかったね。算数の偏差値は62だった。国語が少し弱いね。 立くん: どのくらいだった? 陳さん: 国語の偏差値は54だったはず。でも大丈夫。分析しよう!
寝起き10分後から勉強開始…
日本なら、「お受験地獄」と言いたくなる光景が「優しい」と語られる皮肉。 そう感じていた中国人一家は、東京にもいた。 趙壱楠さん(43)と、大学で日本語を学んでいたという妻の夏南さん家族。 朝6時過ぎ、小学1年生の息子は、まだ夢の中。 息子が目覚める前に朝食を作るのが父・趙さんのルーティーンだ。 6時35分、目を覚ました恩壱くん。 ――お名前は? 恩壱くん: 趙恩壱(チョウ・エンイ)。学校ではお友達が僕を趙さんと呼びます。 まだ、来日して2年の恩壱君は日本語で答えてくれた。 彼の日課は、起きて10分後に始まる中国語の朗読からだ。 眠さをこらえて朗読を終えると、ようやく朝食だ。 父・趙さん: よし終わり。先に朝ご飯を食べよう。 ――おいしい? 恩壱くん: おいしい。 今では、恩壱君の方が日本語の先生に。 父・趙さん: 「いただきます」は先に言うの?お腹いっぱいになったら? 恩壱くん: お腹いっぱいの時は、「ごちそうさまでした」だよ。「いただきます」は、始めだよ。 7時10分、食事が終わると、再び机に向かい… 恩壱くん: これなら どこまでも もぐれるわ。うれしい!だけど この プール こんなに ふかかったっけ? 毎日、日本語の絵本を1冊音読… しかし、朝のルーティンは、まだ終わらない。 7時40分、今度は… 先生: Good morning、How are you?(おはよう、お元気ですか?) 恩壱くん : Good morning.(おはよう) 英語のオンライン授業が始まった。 先生と恩壱くん: What numer is it?(これはいくつですか?) 恩壱くん: It’s ten.(10です) こうして、8時10分の登校時間までに3つの勉強を終えるのだが、そんなことが出来るのも、日本が中国に比べて宿題の量が少ないからだという。 恩壱くんの母・夏さん: 日本は、中国の宿題よりはとても少ないです。中国では子供が9時以降に寝ますので、朝の時間はとてもきついです。 今、恩壱は(午前)6時半ごろ起きてから、3つの習い事(勉強)ができます。 そう語る夏さんの仕事は、日本にある中国系IT関連会社でのテレワーク。 夫の趙さんもまたオンラインなどでの占いを生業にしている。 2人がテレワークにこだわったのはもちろん、息子・恩壱君の勉強をいつでも、サポート出来るようにするためだ。 これほど教育熱心な趙さん夫妻だが、中国の“受験戦争”にはついて行けないという。 父・趙さん: 中国では常に競争が「千軍万馬が丸木橋を渡る」ような状況です。 子どもたちはひたすら勉強を増やし、量をこなして5点や10点を上げるために、10倍、100倍の努力をします。そうでないと、他人を追い越していい学校に入れないのです…。 ちなみに、「千軍万馬が丸木橋を渡る」とは一本の細い橋を、大軍が渡ろうとして他人を蹴散らしてでも生き残ろうとすることだ。 中国の大学入試は、「高考(ガオカオ)」と呼ばれ、受験生を乗せたバスは沿道を埋め尽くす人々や、太鼓からチアリーディングまでが送り出す一大イベントになっている。 それには、中国の進学率に理由があった。 恩壱くんの母・夏さん: 今、中国では多分、半分が高校に進学できます。ということは、半分は(高校に進学が)できないです。 そもそも、日本の高等学校等への進学率は約99%と多くが進学する計算だが、中国では異なるという。 恩壱くんの母・夏さん: ここ数年は、高校に進学できるのは学生の約半分で、 残りの半分は技術学校などに進学するしかないんです。 中国では高校に進学できるのは、約半分なのだという趙さん。 一体、ナゼなのか…。 父・趙さん: (中国では)進学率が制御されているのかもしれません。 労働者や技術者を増やすため、全員を大学に進学させないんだと思います… 。 高校進学の時点でこれほどの厳しさ。 さらに、これが大学受験となると、受験年齢の人口が、約1600万人もいるのに対し四年制大学の定員数が、478万人と約3割しか大学へは進めない。 そんな過激な競争の結果として… 父・趙さん: 競争が前倒しされてしまったのです。そのため、小・中学校の段階で勉強時間が増え、遊ぶ時間はますます減っています…。 そんな実情を映してか、超進学校の様子をアップしたSNSでは体育の授業中も、教科書を手放さない姿が。 昼食の時間も全員起立し、大声でテキストを読み上げるという冗談のような光景まで…。 そんな教育システムに背を向け日本に移住してきた、趙さんはいう。 父・趙さん: 私たちは普通に育てたいと考えています。良い私立中学に入るために勉強ばかりさせて、遊ぶ時間を奪うことはしません。 成績が少し低めの私立中学や、普通の中学に進学しても構わないと思っています。 父親が思えば思うほど不思議と、子どもの成績は伸びてゆき… 先生: 小さく書きましょうね。 恩壱くん: 小さい、犬が、いすにすわる。 今では、国語も、1年生にして2年生の文法を学んでいるという。 ――恩壱くんも中学受験をしたいと? 先生: そうですね。来日当初はそんなことを考えられる状態ではなかったんですけども、レベルも日本の子より上になっているという。ここ半年くらいで、すごく出来るようになったので、お母さんもお父さんも、そういうふうに考えていけるのかなと思っています…。 そんな父親の願いを受け、日本で、のびのびと成長している恩壱くん。 最後に、将来の夢を聞いてみた。 恩壱くん: 飲んだら死なない薬を作る。 ――それはなんで? 恩壱くん: 100万円で売って、お金持ちになりたいから。 (「Mr.サンデー」11月24日放送より)
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