「田中将大は神様ではなく人間」 思い出される星野仙一氏の言葉 巨人で問われる真価
プロ野球巨人は、楽天から自由契約となっていた日米通算197勝の田中将大投手(36)と入団で合意したと発表した。田中将にとって、巨人は11年前の「因縁」がある。2013年に行われた楽天-巨人の日本シリーズ第7戦で、九回のマウンドを託されたのが田中将だった。最後の打者を三振に打ち取り、球団に初の日本一をもたらした雄姿を、記者は現場で取材していた。今回の楽天の退団を巡り、右腕の言動は周囲に大きな波紋を呼んだが、記者には11年前のある「言葉」が鮮明によみがえっていた。 【写真】ラストを締めて楽天が日本一を達成 星野監督とガッチリ握手をかわした田中将大=2013年 ■敗戦を責めなかった指揮官 田中将が退団を発表したその日は、野球の国際大会「プレミア12」の決勝直前だった。2021年に米大リーグ、ヤンキースから楽天に復帰後は思うような成績を残せず、今季は未勝利。球団からは推定年俸2億6千万円から野球協約の減額制限(1億円超は40%)を大幅に超える年俸提示を受け、その後の会見では「居場所がない」などと発言したことについても「居場所は本来、自分でつかむもの」などといったファンからの批判が、SNSを中心に浴びせられた。 今回の退団が発表された際、日本一を達成した13年当時にチームの指揮を執っていた星野仙一氏の言葉が、記者の脳裏をよぎっていた。 「田中将は神様、仏様と言われてきたが、やはり人間だった。人間だからこういうこともある。ただ、田中将の連勝はみんなが支えてきた。その中で田中将も期待に応えてくれた。最後はうれし涙を流したい」 13年当時の田中将は、レギュラーシーズンで開幕24連勝と不朽の大記録を打ち立てた。しかし、日本シリーズ第6戦で先発を託された田中将は巨人にリードを許し、敗戦投手となった。前述の星野氏の言葉は、敗戦直後に選手を集めた際のメッセージである。 あの当時、星野氏は田中将を決して責めなかった。誰でもマウンドに上がれば緊張はするし、結果を残せないときもある。そういうときこそ、周囲の助けが必要になる-。田中将のプライドに留意しながらも周囲のサポートの重要さを説いた、投手出身の星野氏らしい言葉だった。 ■グラブに刻んだ「気持ち」の刺繍