[陸奥讃歩]「歩くこと」発見のカギ
みちのく潮風トレイルガイド・ゲストハウス3710店主 松下竜之介さん 48
岩手県宮古市の宿泊施設「ゲストハウス3710(ミナト)」の店主です。みちのく潮風トレイルのガイドもしています。
約5年前に首都圏から宮古市に移住。地域振興に向き合う中で、三陸沿岸を縦につなぐ取り組みが重要と考えるようになりました。その頃、全線開通から間もないみちのく潮風トレイルを知り、これだ、と直感しました。
当時、みちのく潮風トレイル全線を踏破したガイドはまだおらず、ならば自分が最初に、と全線を踏破。逆向きにもう一度全線を踏破し、両方向で踏破経験があるガイドとして、宮古市内外でハイカーをお迎えしています。現在は運営するゲストハウスの店主としても、ハイカーをサポートするようになりました。
国内だけではなく、海外からのハイカーも増えています。海外ハイカーは、日本人ハイカーとは少し異なり、アウトドアレジャーという特別な体験としてではなく、自然を感じる当たり前の手段として「歩く」ことを選ぶ印象があり、自然との向き合い方を考えさせられます。
大げさですが、歩くことは人間が動物から進化した原点と言えるかもしれません。歩く速度だからこそ気付くことは多くあります。都会とは違う地方ならではの自然の風景や、人間が人間性を取り戻せるような生き方に、ふと気付かされます。
この道を歩くことを目的として、全世界から三陸沿岸地域を選んで訪れる人がいることは、もっと誇りに思っていいと感じます。自然を克服しようとおごるのではなく、自然とほどよく共生し、あるがままを謙虚に受け入れながらバランスをとって暮らす。
地方ならではの暮らしの魅力が、みちのく潮風トレイルを歩くことで見つかります。多くの人がまずは一歩でも、この道を歩き始めたらいいなと思います。