小児医療過疎地の救世主となった「鹿屋方式」…画期的な医療体制確立に奔走した医師に日本医師会最高賞
鹿児島県鹿屋市の池田病院会長、池田徹さん(77)が、地域医療体制の確保に貢献したとして日本医師会最高優功賞を受賞した。「鹿屋方式」と呼ばれる独自の医療体制を2001年に確立したことなどが評価された。「これからも患者のために尽力したい」と話す。 地域医療は崩壊の危機 23年度外来3万2000人、入院1万2000人…種子島南部の医療圏支える公立病院の常勤医が1人に 医師育てる研修制度地方に逆風、人材は設備や待遇整う都市部へ流出
鹿屋方式は、時間外の小児救急を市内の開業医が輪番制で担当し、高度医療が必要な重症者は県立鹿屋医療センターに任せるもの。当時、小児医療過疎を補う画期的な医療体制として注目された。 1998年から市医師会副会長になった池田さんが、センターに勤務する大学時代の旧友に再会。そこで「小児科が崩壊しそうだ」と打ち明けられたのが、鹿屋方式を生み出すきっかけだったという。 当時、市内にいた小児科医はセンターの勤務医2人のみ。日中はもちろん、夜も毎日午後9時まで診療は続き、現場は疲弊していた。そのため、時間外の小児救急は内科などの開業医がカバーするよう提案し、体制の確立に奔走した。 その後、より負担を減らす体制にと、近隣自治体と交渉を続け、11年には内科・小児科の急患に対応する公設民営の大隅広域夜間急病センターが同市に誕生した。「緊急手術などの後方支援はうちを含め大規模な病院が担っている。以前より安定した救急医療体制が確保された」と胸を張る。
11月に受賞した後も毎朝院内を回り、約200人の患者に声をかけ、高齢者の訪問診療も続けている。「患者目線で、元気なうちは現場に居続けたい」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島
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