創業400年・福光屋の14代目が語るスーツの新流儀「きちんと着るセンスと、着流すセンス。両方大切」
「創業400年目のベンチャー企業という心構えで、常に新しいことへ取り組むようにしています」。 ▶︎すべての写真を見る 事業への姿勢をこのように表現した福光太一郎さんは、石川県・金沢にて1625年に創業した酒蔵、福光屋の14代目。 その言葉どおり、日本酒を造るための伝統的な米発酵技術を転用し、ヘルシーなノンアルコール飲料からスキンケア用品まで、一般的な酒蔵とは一線を画す独創的な商品を幅広く開発している。 老舗の屋号に胡坐をかかない進取の精神は、自身のビジネスウェアにも表れているようだ。
「以前はほぼ毎日スーツを着て、タイドアップすることもあったのですが、コロナ禍によってさまざまなことが変化し、現在ではニットやカットソーなどにジャケットという装いが多くなっています。 こうしたビジネススタイルは以前なら絶対に許されなかった銀行の方でさえも今は採り入れており、スーツにノータイは当たり前。これは時代の流れであり、むしろ良い方向に進化していると感じています」。
クール&ウォームビズの影響によるドレスコードの緩和は、コロナ禍でのリモートワークによって一段と進んだ。タイドアップしたスーツ姿は、画面越しでは堅すぎたのだ。 人と人が再び会うようになった現在もその流れは変わらず、福光さんの言うように進化として定着した観がある。だが、こうした新しい流れには新しい流儀が必要でもあると、福光さんは言う。 「服や着こなしが変わっても、ビジネススタイルである以上は、周囲に不快感を与えないことがとても大切。そのためには清潔感や身だしなみが不可欠です。スーツの汚れやシワ、臭いのケアだけでなく、髪型を整えたり、爪を切ったりすることも大事でしょう。 また今回のようなスーツの着崩しは、きちんと着るよりもずっと難しい。クールビズもただネクタイを外せばいいと思っている人が多いですが、僕はそうじゃないと思う。 崩してもきれいに見え、なおかつ周囲に不快感を与えないセンスが必要だと思うんです」。 福光さんが絶賛した薄い肩パッド入りの凛々しいスーツは「ダンヒル」の逸品。トラディショナルな英国スタイルを現代的にアップデートさせた、ベルグレイヴィアフィットを採用している。