AIやロボットは家事労働をどう変えるか、オンライン日英シンポで将来の姿を討議
結果、料理や洗濯、家のメンテナンスなどの家事は人間よりもロボットやアプリが好まれたが、介護については自分で担うか、さもなければロボットではなく人間の手を借りたいという意向が浮き彫りになった。性別の比較では、男性の方がロボットを使いたいという傾向があることが明らかになった。回答者の年齢や勤務時間はあまり結果に影響しなかったが、コストや生産性は重視されていたことから費用を抑えれば関心が高まることが示唆された。
女性はコストが高いと使いたがらない傾向強く
英国の話を受け永瀬氏は、英国以上に男女の家事労働の時間差が大きい日本で行ったヴィネット調査の結果を紹介した。永瀬氏の調査では、料理、掃除などの家事ごとに数千人を対象とした。時間あたりの賃金や週あたりの労働時間などを変数として、例えば「自分は時給1000円で週60時間、配偶者は時給3500円で週15時間働いている。2歳の子の子育て中、介護はしていない」といった架空の状況を示して、ロボット利用の意向を聞いた。
回答者の性別や家事の種類による違いを分析したところ、ロボットを利用したいという回答に男女差は見られなかったが、女性はコストが高いと使いたがらず、生産性を重視する傾向が強かった。永瀬氏は「社会規範のような価値観ではなく、雇用形態の差などからくる男女の賃金・労働時間の差が家事分業に影響を与えている」と考察した。また、料理や掃除などの家事についてはロボット利用に前向きな回答が多かった一方で、育児は配偶者の関与が好まれ、介護は自分や(ロボットではなく)人間の手を借りたいという回答が多いという結果も示した。
社会構造の変化を自動化によって埋めることができるか
締めくくりの発表は国立社会保障・人口問題研究所室長の福田節也氏から。家事などの無償労働を行うことを「供給」、その恩恵にあずかりご飯を作ってもらったり着た服を洗濯してもらったりすることを「需要」として、社会構造が変化すると無償労働の需要や供給がどう変わるのかを予測した。 日英の生活時間調査によると、両国ともに女性の方が多くの無償労働を供給し、乳児期・幼児期と老齢期の需要が大きくなっていた。日本の方が供給の男女差が大きく、英国の方が老齢期の需要の増加が大きいという傾向も見て取れた。その傾向は変わらずに人口構造だけが変化すると仮定して、2060年までの需要と供給の変化を推計したところ、日本では特に家事と育児の時間が足りなくなること、英国では家事や介護・看護の時間は足りなくなるが育児の時間は逆に余ることが分かった。