AIやロボットは家事労働をどう変えるか、オンライン日英シンポで将来の姿を討議
人工知能(AI)やロボットが普及すると仕事がなくなると心配したり、逆に新しい仕事や働き方の可能性が広がると期待したり、将来の姿はさまざまに論じられている。その一方で、家事や育児、介護などの無償労働とされる活動は研究の世界でもほとんど注目されず、未来を描くための基礎データも乏しかった。日本のお茶の水女子大学などと英オックスフォード大学はこの未開の分野に共同で取り組み、11月24日のオンライン国際シンポジウムで成果を発表した。
専門家は10年後に39%の家事が自動化と予測
まず、研究プロジェクトの代表を務めるお茶の水女子大学教授の永瀬伸子氏が「英国側と日本側で、かなりワクワクしながら、ディスカッションして進めた研究の成果を紹介する」とシンポジウムの趣旨を説明した。
最初の登壇者であるオックスフォード大学リサーチアソシエイトのルル・シー氏は、料理、買い物や掃除といった家事が今後どのくらい自動化されると予測するか、日英のAI分野の専門家65人に尋ねた調査結果を示した。家事の種類によりばらつきがあったが、平均では5年後に27%、10年後に39%の家事が自動化すると予測された。 回答者の性別や国籍、あるいは大学・公的研究機関や企業の研究所、ベンチャー企業といった所属によっても回答傾向は異なっていた。英国では日本より自動化が進むという回答が多く、男性の方がより楽観的だった。他方、日本では逆に女性の方が、自動化がより進むと予測していた。シー氏は「日本の男性は自動化のコストが高過ぎると捉え、女性はそれだけのコストを払う価値があると捉えるために違いが生じている」と考察した。
架空の社会を想像して、何にロボットの手を借りるか
続いて同大教授のエカテリーナ・ヘルトグ氏が、調査対象者が研究者から示された架空の状況を想像して回答を選ぶヴィネット(Vignette)調査について説明した。ヘルトグ氏の調査では、19歳から70歳までの9000人あまりの英国の人々(平均年齢45歳)に、近未来のスマートテクノロジーが普及した社会を舞台にした4つのシナリオを提示。回答者は、家事や介護を自分でするか、お金をかけてでもロボットや人間の手を借りるかなど、架空の社会で自分ならどのように行動するかを選んだ。