「芯からダンスが好きなので」翔凜高等学校チアダンス部 梶本雅さん 日本一獲得に秘められた競技への愛情と思考力
常にチアダンスに向き合うきっかけとなった教えとは?
梶本さんのストイックな精神、そしてチアダンスが好きという気持ちは日常生活の中で自然と表現されていた。それはコーチからのある教えがきっかけだった。 「クラブのコーチに『1日やらないだけで3日後退する』というのが強く心に響きました。教わった日から一層スイッチが入りました」 以降は柔軟性を向上させるストレッチや体幹トレーニングなど、より一層チアと向き合う毎日になった。 「センターであることが全てではないですが、どこのポジションでもセンターの意識で踊ることも教えていただいていました。ただ、やるからにはセンターは獲りたいという想いがあってので目指していました」 そしてチアダンスが好きという気持ちが日々溢れているシーンについて、父親である祐介さんが明かしてくれた。 「以前から先輩や自身の大会で踊っている動画を毎日見ています。僕たちも曲が流れた瞬間に何の踊りか分かるくらいです(笑)それは”やらないきゃ”とではなく、純粋に好きで上手くなりたいから自然に見ているというのは間近で感じていました」 ちなみに、祐介さんも身体障害者野球チーム「千葉ドリームスター」の選手である。4番・捕手を張る強打者で、全国大会にも毎年出場している。 自身も長く野球を続けているスポーツマンであることから、雅さんに競技としての姿勢を教えていた。 「僕が伝えていたのは、ダンスも先生に教わりに行くのではなくて”披露する場”だと。行かない時に練習して、先生には見せる=アピールする場なんだというのは伝えていました」
入学時から目標としていた個人賞で日本一に
中学を卒業すると、翔凜高等学校に入学した梶本さん。その決め手はクラブのコーチが同校でも教えていること、そして共に踊ってきた先輩方も進学していたことが理由だった。 「先輩方がいたからこそ『元々踊っていた仲間とまた一緒に踊れる』と感じたので、迷いなく決めました」 元々踊っていた先輩の一人は今回自身が受賞した文部科学大臣杯を受賞していた。小さいころから一緒に過ごしてきた尊敬する先輩が、おのずと目標になった。 高校で部活動として行うことになり、週6回に練習日が増えた。好きなチアダンスにより打ち込めるようになったのが何よりの喜びだった。 「ダンスが好きな人が集まっている部活なので、みんなで授業終わりに好きなことを目一杯できる。レベルアップにもつながるので今も本当に幸せなんです」 梶本さんは積み重ねてきた経験を基に早速実力を発揮した。昨年1月の「第十四回全国高等学校ダンスドリル冬季大会」に出場し、1年生ソロ部門で早くも1位を獲得。 中学時代まで通ったクラブでは、団体の他にもソロでの大会出場経験があった梶本さん。緊張はあったものの、「(ソロも)経験してあの舞台に立つイメージがありました」と振り返った。 2年生になると、関東大会で全国最高得点で優勝し、昨年7月の「全国高等学校ダンスドリル選手権大会2023」に出場。選手宣誓も担当した。 同大会の個人の部では、全国8ブロックを制した選手など13名がこの舞台に立った。入学時から目標としてきた文部科学大臣杯を獲得するための大会。 梶本さんの出場した部門では、バレエダンスの基礎ができることが評価のポイントとなる。出場者それぞれが曲や振付を考えて披露される。 約10年もの間成長を支えてきたコーチが、梶本さんにあった曲や振付を考え、梶本さんもそれに応えるパフォーマンスを完遂。晴れて全国の頂点である文部科学大臣杯を受賞した。 「一番は”恩返し”の気持ちで舞台に立ちました。両親や振付を考えてくださったコーチ、チームメート、クラブチームの先生方たちへの想いを持って踊りました」 入学時から目指していた女王の座。背中を追い続けてきた先輩にも受賞したその日に報告し、祝福を受けた。