『サ道』作者・タナカカツキ「疲れやすい社会に一石を投じたい」。忙しすぎる現代人に勧める“4時起き8時間タスク”とは?【インタビュー】
サウナブームの火付け役『サ道』(PARCO出版)で知られるマンガ家・タナカカツキ先生が、日常生活を明かす新著『今日もまたそんな日 超朝型ルーティン生活の愉しみ』(集英社)を上梓した。かつて、朝方まで仕事へ没頭する生活で体がボロボロになりかけたのを経て、タナカ先生が手に入れたのは、朝日を浴びて、午後は自由を謳歌する「4時起き 8時間タスク生活」。忙しすぎる現代人にとって、余裕をもたらすヒントとなりうる日常生活を聞いた。 【漫画】『今日もまたそんな日 超朝型ルーティン生活の愉しみ』を読む
■教え子の大学生たちが「自立して生活する時代」へ飛び込む前に
――新著では、タナカ先生の日常的なルーティン「4時起き 8時間タスク生活」を扱っています。毎日、4時に起床して、午前中は20分ひとコマのタスクを学校での時間割のようにこなし、午後は「定休日」として休む。この生活を58歳の現在まで、10年以上続けていらっしゃるそうですね。 タナカカツキ(以下、タナカ):原点は37歳の冬、サウナの年でした(笑)。20代から30代半ばにかけては、深夜から朝方まで仕事をして12時頃に起きる生活サイクルでしたけど、子どもが生まれたのをきっかけに日常生活を見直したんです。まず、7時起床の生活に切り替え、起きてすぐ窓を開けて朝日を見るのが好きになり、日の出が早い夏に「日が昇るのを見たい」として、4時起きの生活になってからは10年以上が経ちました。
――午前中の8時間で20分ごとのタスクを細切れに実行される生活をされていますが、これも当初からだったのでしょうか? タナカ:いえ、早起きに切り替えたあとですね。子どもが生まれて「安定的に作品を描き続けるには、どのような生活をするべきか」と考えたんです。生活を見直す以前は、明け方まで作業に没頭していたんですが、体にガタが出てきたんですよ。生理学、心理学、脳科学の書籍を読みあさり、人の行動を学んで、自分が理想とするサイクルへと落ち着きました。 ――在宅仕事歴は40年にものぼる今、そのノウハウを本書で伝えようと思った背景も伺いたいです。 タナカ:リモートワークなどもあり、人それぞれが自立して生活する時代が進みつつある今、意味があると思ったんです。ひとつ、きっかけにあったのは大学生とのふれあいでした。2004年から京都精華大学デザイン学部の客員教授として、大学3年生向けの講義も担当しているんですが、いずれ学生たちが表現活動を自宅でやるようになったのを想像したときにふと「彼らに伝えなければ」と思い立ったんです。 本書のもとになったメンズ誌「UOMO」ウェブサイトでの連載がスタートしてからは、似た悩みを抱えているのは学生だけではないとも気が付きました。 大学で同じく教鞭をとる先生から「大学でいつまで働けるか分からないし、副業しよう」と聞きましたが、本業以外のスキルを伸ばそうにも、自宅に帰ってから副業の勉強をしようにも体が疲れていたら、とても、日常にプラスして勉強しようとはならないですよね。それを根性論で説き伏せようとする人もいますが、疲れやすい社会になっているのが根本的な原因ですし、ならば「自分が一石を投じられれば」と思ったのも、作品を手がけた理由でした。
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