「賃貸と持ち家、どちらがお得か」と考えることが間違い…不動産屋が絶対に教えてくれない「住まい選びの鉄則」
住宅は持ち家と賃貸、どちらを選んだほうがいいのか。公認会計士の千日太郎さんは「2つの違いは、自分が所有している家か、他人が所有している家か、というだけ。貸借対照表で考えると、その人なりの結論は簡単に導き出せる」という――。 【画像】持ち家でも賃貸でも、将来にわたってお金は必要 ※本稿は、千日太郎『不動産屋が絶対に教えてくれない「最高の家」の買い方』(扶桑社)の一部を再編集したものです。 ■賃借対照表で考える「賃貸・持ち家」問題 物件に関して、「賃貸が得か? 持ち家が得か?」という話題は尽きません。さまざまな有識者がさまざまな観点から、どちらのほうがいいと言っている雑誌やウェブの記事を見かけますが、私の本音としては、実は「損か得かなんて、どちらでもいい」と思ってます。大切なところにフォーカスすれば、「賃貸か、持ち家か」は、それほど重要なことではありません。 賃貸住宅に住むことは「他人が所有する家に自分と家族が住むこと」であり、持ち家に住むことは「自分が所有する家に自分と家族が住むこと」です。どちらが得か問題は「貸借対照表」(画像1)で考えると明白になります。「貸借対照表」はバランスシートとも呼ばれ、企業の財務状態を明らかにするために、資産・負債・純資産の状況を表した決算書のひとつのことです。 左側の「資産」は財産のことで、所有している現金、預金、不動産がこれに当たります。右上の「負債」は借金のことで、住宅ローンなどがこれに当たります。右下の「純資産」は「資産」から「負債」を引いた差額になります。 「純資産」が厚いと安心ですが、逆にマイナスになった場合は「債務超過」と言われる状態になり、企業であれば倒産をしてしまいます。個人になると、融資を受けることができなくなったり、債務整理をして、最悪の場合は自己破産が必要になる可能性も出てきます。
■賃貸は家を所有するよりも費用がかかる 賃貸物件に住むということは、「他人の貸借対照表の資産に対して使用料を払う」ということになります。 そもそも、不動産賃貸業の仕組みについて、簡単にご説明しましょう。不動産賃貸業は銀行から融資を受けて不動産を購入した人(いわゆる大家さん)が、それを他人に貸して、その家賃で銀行から借りたローンを返済していくというビジネスモデルです。 大家さんは銀行への返済と同時に、大家さん自身への取り分をプラスした家賃を部屋を借りる人(借主)に請求します。家の修繕も借主からの家賃で賄われています。 目には見えませんが、大家さんが購入した不動産を維持するために必要な費用プラスαを借主から家賃として得ていることになります。自分で家を所有するよりも高い支出を負担することになることが、賃貸物件のデメリットと言えるでしょう。また、病気やケガなどで家賃が払えない事態になった際は、退去しなければなりません。 一方、賃貸物件のメリットとしては、借主は自分好みの立地や築年数や間取り、納得できる月々の家賃を自分で選べるということです。家賃を払い続けることさえできれば、住み続けることができます。もちろん、嫌になればいつでも出ていき、違う賃貸物件を借りればいいだけのことです。所有することの責任から自由だということがメリットに当たるでしょう。 ■債務超過になっても追い出されはしない 持ち家に住むということは、自分の貸借対照表を持つということです。「負債(=住宅ローン)」を自分で銀行に返済していきます。 それは、自分が大家さんになることではありません。大家さんは銀行への返済プラスαを借主から家賃として請求していますが、住宅ローンの支払いは、家賃ではなく自分の収入から支払うものです。 たとえ、この貸借対照表が債務超過になったとしても、毎月の住宅ローンを払える収入さえあれば、そのまま住み続けることができます。企業のように倒産することはありませんので、ご安心ください。