孤独死「8割が65歳以上」超高齢化社会の現実…“現場”に遭遇した時、どんな対処をすればいいのか?
孤独死を防ぐ方法はあるのか
発見までの日数の最多は「3日以内」だったものの、平均では18日もかかっている。こうした状況は、近隣とのコミュニケーションが密になれば、より早期の発見につながる。そもそも孤独死の原因となる孤立を回避できる。 そこで、自治体が地域住民による見守り活動を推進したり、セキュリティの延長で警備会社が高齢者等の見守りサービスを行っている事例もみられる。 生きがいを見出すというアプローチで、高齢者が自ら能動的に孤立を予防するアクションもある。その対象として、じわじわと注目度が高まっているのが、「遺贈寄付」という仕組みだ。 遺贈寄付とは、遺言や信託を使って自分が亡くなったときに残った財産から寄付すること。人生の終わりのための活動、いわば終活の一環だ。 「親族と疎遠になっている高齢者の方が、ご自分の納得する形で財産を活用する選択肢として、遺贈寄付は親和性が高いと考えています。その理由は社会に恩送りをしたいといった想いを実現できること。老老相続で高齢者に固定化された資金を生きたお金に換えられることなどです。寄付先は自分が望む団体・組織になりますから、財産の使い道として納得感も高いと思います」 こう解説するのは、「遺贈寄附推進機構」代表の齋藤弘道氏だ。寄付というと、潤沢な資産を保有する人に限定のものと思われているが、「大きな誤解です」と同氏は力を込める。 「遺贈寄付というと、『私にはそんなお金はない』と多くの人が言います。実はこうした考えは寄付にありがちな思い違いなんです。ほんの少しでも大丈夫ですし、そもそも寄付するのは亡くなった後ですから、生前に金銭的な負担はないんです」 金額の問題よりも大事なことは、生きる力につながることと齋藤氏。「自分の想いが、寄付という形で生前から応援している組織に伝わることで、生きがいにもつながっていくんです。組織の側も寄付してくれた人に対して深く感謝してくれますから、社会とのつながりを実感できるようです」 高齢になり、ひとりで暮らしているというとネガティブに捉えられがちだ。だが、その背景にはさまざまな事情があり、それぞれが自分の価値観や尺度のなかで精一杯生きている。問題はそうした個々が、何かのきっかけで社会と断絶された時だ。 そうした時、個人でできることには限界がある。そこで頼りになるのが、自治体や地域のコミュニティだ。 仕組みとして、見回り等の体制が整備されていれば、“センサー”として機能し、最期の発見も穏やかにできるかもしれない。第三者として、そうした場面に接したとき、どんな対応をすればいいのかを知っていれば、及び腰にならず、慌てることもないだろう。 日本社会に否応なく迫る高齢化。これをネガティブな将来としないために、やれることはいくらでもある。どんなことでも一歩を踏み出すことが、他人のためになり、そして自分のためにもなる。 -------------------------------------------------------------------------------------------------- 齋藤 弘道(さいとう・ひろみち) 遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事 信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の「全国レガシーギフト協会」)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。
弁護士JP編集部