平戸海、地道に実直に 大の里に示した気概―大相撲夏場所
厳しい稽古で知られる境川部屋。 いかにも、その部屋で鍛えられた力士らしく、白星を挙げても、舌が滑らかになることはない。ただ、平戸海の表情は晴れやかだった。「踏み込みが良かった。いい相撲だった」。注目を集める新小結の大の里を圧倒。短い言葉に実感を込めた。 初めて顔を合わせたのは3月の春場所。もろ差しを果たしながらも圧力負けし、「悔しかった」と振り返る。今回は懐に入ろうと左で前まわしを探った。まわしは引けずとも、低い姿勢でがむしゃらに手を伸ばし、休まず攻めて押し出した。 同じ2000年生まれだが、歩んできた道のりは対照的だ。大の里は日体大で2年連続でアマチュア横綱となり、エリート街道を駆け上がってきた。「大器」と騒がれ、幕下10枚目格付け出しでデビュー。一方の平戸海は16年春場所で初土俵を踏んだ中卒たたき上げ。「同年代には負けられない」との一心で挑んだ。 地道に番付を上げ、自己最高位の東前頭2枚目で迎えた今場所。初日に大関貴景勝を破るなどの奮闘を見せ、「自信が出てくる」。華々しさはなくとも、実直に腕を磨いてきた平戸海もきらりと輝いている。