コクヨ、「誰も置き去りにしない」ハウズデザインで経済合理性のなさに商機を見出す
記事のポイント ①コクヨは2023年からインクルーシブな視点を商品開発に取り入れた ②独自の4ステップから成り立つ手法を「ハウズデザイン」と名付けた ③人口減少が進む中、「誰も置き去りにしない」デザインで商機を見出す
コクヨは2023年からインクルーシブデザインに力を入れる。障がいのある人らマイノリティーの当事者と対話を重ね、独自の4ステップから成り立つデザイン手法を確立した。人口減少が進み経済がシュリンクする中で、「誰も置き去りにしない」デザインによって勝機を見出す。同社の井田幸男・CSV本部サステナビリティ推進室理事に話を聞いた。(聞き手・オルタナ副編集長=池田 真隆) コクヨの「HOWS DESIGN」は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル★セレクション2024」の三つ星に選ばれました。次回の一つ星エントリーは、1月14日まで受け付け中です。 エントリーフォームはこちら
――インクルーシブな視点で商品を開発する手法を「HOWS DESIGN(ハウズデザイン)」と名付けました。これまでの商品開発の手法とどう違いますか。 ハウズデザインは、社会のバリアに阻まれている人の視点を商品設計に取り入れた考えた方です。障がいのある人など社会のバリアに阻まれている方々を、「リードユーザー」と位置づけ、その視点や気付きを企画段階から組み入れました。 ハウズデザインのプロセスは、① 社会のバリアを見つける② 解決方法のアイデアを検討する③ 試作品で検証する④ 具体的な商品やサービスで検証する――の4ステップから成り立ちます。 カタログなどのデザイン・印刷を手掛ける特例子会社コクヨKハートの社員と話し合いながらハウズデザインを体系化しました。 「取り出しやすさ」「視認のしやすさ」などの価値で差異化を打ち出しながら、同時に、社会のバリア解消につながる取り組みです。
4つのプロセスすべてに共通しますが、当事者との「対話」を重視しています。これまでは、「当事者の声が聞こえない」という理由からマイノリティー(少数派)を考慮せずに設計しがちでした。 「困っている人がいるかもしれない」という前提に立って、当事者と何度も話し合いを重ねていくことがポイントです。この4つの工程は、従来の開発プロセスになかったものです。未知の領域であるので、「失敗は付き物」です。 コストにもなりますが、できるか・できないかではなく、目指すか・目指さないかが重要だと考え、存在意義(パーパス)を基に意思決定しました。 インクルーシブな視点を持って、誰か一人のために開発した製品がみんなにとって使いやすいものになると信じています。 2030年までに、新製品の50%以上をこのハウズデザインで開発することを目標に掲げました。