「焼肉ライク」がまさかの店舗数減。食べ放題チェーン「焼肉きんぐ」と分かれた明暗
食べ放題店の価格設定は難しい
焼肉は外食の中では高価な部類だが、食べ放題ならリーズナブルだ思う人も多い。しかし、あらゆるコストが値上がりする今、どの店も値上げせざるを得ない状況で、焼肉チェーン大手でも1人あたり食べ放題価格3500~6000円が標準である。 節約志向がより一層高まるなか、どこの店も色々なキャンペーンを実施し、集客策を講じて店を活性化させようとしている。女性が集まれば、店内が華やかになり、かつ男性客も集まるということで、女性だけの割引を実施している店は多い。一方でそれが「男性差別」だと批判の対象にもなるので難しいところだ。 また、それとは別に子供料金やシニア料金など年齢を基準に価格差をつけて安くする店がほとんどだ。お店側も採算を考えた上、価格設定するが、その価格差もけっこう難しい。利益を確保しなければ存続は困難だが、あまりお客が得をするだけの価格には設定できない。また、幼児を無料にしないとヤングファミリーが集客できないが、お店としては幼児だけで席を占領されては困るため、二律背反となっている。
1人焼肉「焼肉ライク」が意外な苦戦
そもそも焼肉は高いものというイメージが定着していたが、1991年の牛肉の輸入自由化をきっかけに、安く食べられるようになった。今となっては当たり前にある焼肉食べ放題も、仕入れ原価が低くなったから可能になり、30年以上かけて浸透してきたのである。 焼肉食べ放題の店が全国に広まったことで、これまで贅沢な食事とされていた焼肉が、若者層でも容易に食べられるようになった。お客もいろいろな店に行って、価格・品質・種類の要求水準も高くなった。店側も生き残るため、それらの要求を必死に聞き入れ、競争上の優位性を持とうとしている。 おひとりさまの孤食が注目されつつあるなか、コロナ禍の外出規制で孤食ニーズに対応した店がより増加した。その中で、1人焼肉文化を流行らせた「焼肉ライク」はどこよりも積極的に展開し、一時期100店舗を超えたが、最近は84店舗(24年7月時点)と縮小している。 客単価向上に向けた商品政策で、節約志向の人が増えるなかで、焼肉ライクが安さを求める1人客のニーズと乖離してきた感は否めない。しかし、同社のような革新的業態が勢力を拡大するうちに、低価格を維持できなくなり、後発の同コンセプトの店に追随され、淘汰されるのは小売・外食の世界ではよくあることだ。今後の展開を注視したい。