「焼肉ライク」がまさかの店舗数減。食べ放題チェーン「焼肉きんぐ」と分かれた明暗
存在感を発揮する「焼肉きんぐ」
焼肉きんぐの直近の業績を見ても、売上は2024年7月98.8%(前年同月比)、8月105.3%、9月101.5%、10月105.2%。客数は2024年7月98.4%、8月105.1%、9月103.0%、10月101.6%と安定している。 店舗数も2007年に1号店をオープンさせると、2011年半ばには50店舗、2014年6月期には100店舗を突破。現在(2024年10月時点)では301店舗と順調に増やしている。 しかし、今年9月には食べ放題コース4種類などの価格を110~330円値上げを行っている。コスパに敏感な一部客から辛辣な意見があるのも事実であり、この点をどう克服するかが課題であろう。とにかく、限られた予算の中での外食消費、お客さんの要求レベルの高さに店は苦労しているのが実情だ。
顧客提供価値を追求する食べ放題
筆者が運営していた焼肉店で提供していたのは、ロース、カルビ、上ハラミ、タン(先の端材)の4種類の盛り合わせだった。ライスも食べ放題で、他の店も同様の内容のはずだ。 牛肉はアメリカ産だが、日本人の嗜好に合わせて肥育されており、霜降りの柔らかいお肉で、仕入価格も1キロ1000円くらいだった。特にハラミ(横隔膜)はキレイな霜が入り、歩留まり率は悪かったが、とにかく安くて見栄えが良くて美味しい肉だった。 干ばつなど肥育環境の悪化による供給不足、円安、輸入コスト上昇など、昨今は焼肉店を取り巻く環境が悪すぎる。 牛肉の仕入れ値も高騰しているため、最近の焼肉食べ放題のメニューを見ると、牛肉だけでなく、鶏・豚肉、ホルモン、前菜、逸品、サラダ、スープ、キムチ、唐揚げやフライドポテトなどの一品料理、麵飯類、デザートなど多品種フルラインメニューで対応するなど、本道の焼肉で勝負できていないのが実情だ。
“分散型食べ放題”が主流に
原価の高い牛肉から低原価メニューへの“分散型食べ放題”が主流となっており、各店が食べ放題メニューの品目数の多さを競い合っている感は否めない。多彩な一品メニューなどに注文が分散されるからオペレーションは複雑化するが、費用の中で最も比重が重い原価が軽減されるのは店にとってありがたい。 お客としても肉ばかりは食べられないから、飽きがこないメニューで構成されているのは嬉しい。顧客満足度も高まり、店側の原価対策にもなっているから双方にメリットがある。また、これが食べ放題のお肉かと思うほど、隠し包丁を入れ柔らかさを増している店も多く、現場は顧客満足度の向上に向け苦労している。 また、タレでしっかり揉んでいるので濃い味になっており、白米にもよく合う。しかし、そのご飯も高品質米の供給不足で、価格が高騰している。とはいえ、お肉と比較するとまだ原価は低く、お腹にもたまりやすい。お肉の追加注文が減るのは当然なので、お店側はラッキーと思っているはずである。 季節ごとに旬の食材を入手し、その時々の絶品メニューを提供して、それらが絶妙な来店動機になり、何回通っても飽きのこないメニューの豊富さは、焼肉食べ放題人気が続く理由だ。こういった内容に価値あるサービスを、リーズナブルな価格で提供できるお店が生き残れるだろう。 また、人手不足や人件費が上昇する今、DXを推進し、タッチパネルのオーダーシステム・配膳ロボット・セルフレジなどを活用するのが標準だ。いくら食べ放題とはいえ、お客側も何度も追加注文をお願いしにくいものだが、タッチパネルと配膳ロボットによる商品提供で、店員を介さずに好きなだけ食べられるのは嬉しいことだ。