大河出演・矢部太郎「人生をつくるプレゼント」 乙丸役が好評、芸人・漫画家などマルチに活躍
家のなかにある捨てられないプレゼントは、他人から見ると無価値でも、そこに込められている記憶や、思いが自分を形づくっている。『プレゼントでできている』を読んでいると、自分自身が受け取って来たプレゼントのことも、次々と思い浮かんでくる。 ■『光る君へ』演技の裏側にある漫画家の視点 本書には『進め! 電波少年』などのテレビ番組や『幕末純情伝』などの舞台に出演した当時に贈られたプレゼントに関するエピソードが多く、矢部さんの芸人や役者としての活躍を知っていると、より深く内容が迫ってくる。
現在出演中のNHKの大河ドラマ『光る君へ』では吉高由里子さん演じる、まひろ(後に『源氏物語』を書き、紫式部と呼ばれる)に使える従者、乙丸を演じる矢部さん。撮影現場で何を感じているのだろうか。 「僕が面白いと思うのは、主人公のまひろが将来的に『源氏物語』を執筆し、1000年後の読者とも、つながる可能性があるということです。 まひろさんの中にはすでに『源氏物語』が息づいているように感じますし、『光る君へ』のドラマの世界観が、その登場人物たちも含めて、紫式部の書いた『源氏物語』に流れていく川なのだと思うと、興味深いです。
僕の演じる乙丸も、きっとまひろさんの書く物語の一部になるのだと想像し、ワクワクしながら演じています」 紫式部が当時の貴族社会を反映した『源氏物語』を執筆したということ自体が、当時の、そして1000年後の読者に対しての、プレゼントなのかもしれない。 「書くことで読者に何かを手渡すというのは、僕が漫画を描く動機にもつながる考え方です。 『プレゼントでできている』で描いたプレゼントも、1対1で、誰かにプレゼントを渡して、お返しを貰って終わり……という類いのものではなくて、受け取ったものをまた別の誰かに手渡すという、つながりをイメージしています。
漫画を描いている僕自身も『本にして終わり』ではなく、この本を読んだ人にも何かがつながればいいなと思って、描いています。 そんなことを普段から考えているからでしょうか。まひろさんが後に『源氏物語』を書く作家であるということは、意識していますね」 漫画家ならではの視点が、ドラマの役柄にどう反映されているのか、『光る君へ』での矢部さんの演技に注目したい。 ■紙粘土の人形をあげたら「いらない」 『プレゼントでできている』のなかには、プレゼントを貰うだけではなく、自ら贈るエピソードも多い。そのなかには、プレゼントを贈った結果、微妙な反応をされたというケースもある。