大河出演・矢部太郎「人生をつくるプレゼント」 乙丸役が好評、芸人・漫画家などマルチに活躍
しかし矢部さんは扱いに困るような「捨てられないプレゼント」にも、価値があるという。 ■20年前にもらった炊飯器が捨てられない 家のほとんどが、さまざまな人からのプレゼントで構成されているという矢部さん。その持ちもののなかでも、特に思い入れがあるのが、20年前にもらった炊飯器だそう。 「実は今現在でも、僕は20年前の炊飯器を使っています。ある舞台で共演した方から急にいただいたんです。その方との何気ない会話で『ご飯食べてる?』と聞かれて『炊飯器も持ってなくて』と話したら、なんと次の日に炊飯器を買ってきてくれたんです。これ、今でも捨てられないんですよね。もう経年劣化しているんですけど。
毎回ではないですが、ご飯を炊くたびに思い出すのが、初めて大きな演劇の舞台に立った時のことや、炊飯器をいただいた方のこと。すべて特別な思い出で、型番やカタログには載っていない、自分だけの幸せです」 お米を炊く機能とは別の価値を帯びたその炊飯器は、たとえうまくお米が炊けないときがあったとしても、特別なものなのだ。 「もちろん最新型の炊飯器は気になりますよ! 20年経つと家電も調子が悪くなりますから、テレビの炊飯器特集を見るたびに、美味しそうだなと羨ましく思います。でもそれとは別に、この炊飯器には僕にとっての特別な価値がある。だから『捨てられないプレゼント』なんです」
その時の共演者の気遣いが、炊飯器という形となって矢部さんの日常のひとつのパーツになり、20年かけて当時の思いや経験が矢部さんの人生に染み込んでいく。それは形あるモノとして残るプレゼントだからこそ、起こることだ。 「本を描くなかで、今まで受け取ってきたプレゼントと向き合う過程は、自分が自分自身であることを受け入れていく過程だったと思います。 受け取ってきたモノやそれに込められた言葉や気持ちを、一つずつ見つめ直して受け入れていく過程は、誰かと比較する必要のない、自分だけの体験や価値を受け入れて『自分はこうである』と認めることでした。それが、『プレゼントでできている』というタイトルにもつながっています」