アジア・アフリカの電化に貢献。海のガス輸入基地。商船三井、改造工事に魂注ぐ。連載(下)
■長寿命化工事
LNG船からFSRUへの改造工事は「長寿命化工事」と「転換工事」の二つのステージに分かれる。 「一般的に商船は5年間に2回入渠するが、KARMOLのFSRUはガスの安定供給というプロジェクト要件のために10年間入渠しない前提で長寿命化工事を施す」(ミンジュン氏) 準備段階としてまずLNG船の配管の主要部分を切断して状態を検査し、溶接部分をエックス線でチェック。船内制御システムをはじめ主要設備を最新機器に入れ替え、スペアパーツに十分な予備を確保する。 今回の改造対象のLNG船は船齢30年超だが、日本造船所が建造し、長期輸送契約に専従していたことで健全な状態を保っている。ミンジュン氏は「建造した日本造船所の高い技術のおかげで、メンテナンスを徹底すれば、船齢50―60歳まで使用できるだろう」と話す。
■係留システム
KARMOLがLNG発電を展開する新興国では設置海域に桟橋が存在しないケースも多い。このため、FSRUが単独で波浪や悪天候に耐えて長期安定操業できるよう、強靭(きょうじん)な係留システムが欠かせない。 「FSRUが桟橋の機能を担い、最大でトリプルバンキング(3隻同時接舷)も可能とする。全てを支える強固な係留システムの搭載は改造工事において非常に重要な工程だ」(ラトーレ氏) 係留システム設置の準備作業として、船首と船尾の船体ブロックを切り出し、より厚い鉄板で強化したブロックと入れ替える。その上で船首と船尾それぞれに係留システムを搭載する。 こうした一連の工事の後、ドライドックでの船体メンテナンスや再塗装を経て、改造FSRUは第2ステージの転換工事に入り、再ガス化設備などを搭載する。 KALMOLのFSRUと発電船は汎用(はんよう)性を重視し、多様なニーズに応えられる仕様を採用。LNG発電プロジェクトの成約時には、最短で6カ月以内に電力供給可能な体制を目指している。