「ザ・イノウエ・ブラザーズ」が琉球藍染めの新たな価値創造に注力 「儲からないとやりたくないは格好悪い」
聡:今、まさにチャレンジしているところ。現在のアパレル製品は個体差があるとよくないというフォーマットだけど、そのフォーマットを超えるチャレンジは、藍染めではなく、売る側が取り組み解決しなければいけない。消費社会のフォーマットをどう変えるかにも通ずるところだとも感じている。それは昔の商売の方法に戻すのではなく、最新テクノロジーによるプレゼンの方法の問題だと考えている。藍染めは他の染色法にはない魅力があるし、藍染めの製品は他とは違うという気持ちにさせてくれる。こうした藍染めの魅力をどうプレゼンしていくか模索しているところだ。
沖縄移住の背景
WWD:2022年7月にデンマークから沖縄に移住した。なぜ?
聡:きっかけは2018年頃に長女が日本の高校に通ってみたいと興味を持ったこと。妻に相談すると教育に関しては、日本よりもデンマークの方がよいのではとなりいったん保留になった。
新型コロナウイルスの影響でロックダウンになった20年、生き方を考え直す時間ができ、改めて移住について考え始めた。気候変動の影響の一つにウィルスの脅威があると専門家も以前から指摘していたし、今回のコロナが1回切りのことではないとも感じていた。これが何かの始まりで今がチャンスだと考えた。とはいえ、妻は引き続き子どもを育てる環境として日本はふさわしいかと反対していた。そのとき思い出したのは沖縄で見かけた幸せそうだった子どもの姿。釣り竿をリュックにさしてビーサンでチャリに乗ってニコニコしていた。妻に沖縄を提案すると賛成してくれ、家族全員が「行きたい」となった。
WWD:教育について議論になったポイントは?
聡:僕個人の考えだけど、デンマークは緩すぎて日本は硬すぎる。両方のコンビネーションがいいと思っている。デンマークは個人にフォーカスしている。例えば低学年の頃から自分の意見を伝える訓練をするし、ディベートの仕方を学ぶ。情報に疑問を持つことを徹底的に教える教育を行う。また、教師と児童・生徒と立場はあるが、平等だし先輩後輩もない。他方、子どもにプレッシャーがかかるからと成績を付けるのをやめるなど緩いところもある。成績は僕自身子どもの頃にモチベーションにもなっていたから、この判断がいいかは疑問だった。日本では先輩後輩の関係を大切にする。先輩を尊敬し年配者は後輩の面倒を見る。一方、日本の教育は子どもが子どもらしくいられない、大人のような振る舞いを求めるところがある。周りに迷惑をかけないことや礼儀正しい態度など、社会人になるために準備をする側面が強いと感じていた。子どもはたまにけんかしたり、ちょっとくらいけがしてもいいと思うから。
僕自身人生の後半に入り、時間を無駄にしたくないと強く感じていて、もっとできることがあるのではと気づきを求めて来たところもある。実際デンマークにいた時よりもいろんなプロジェクトを進めている。