東京地裁が入る庁舎＝東京都千代田区

　東京拘置所に収容中の確定死刑囚の男性が、カメラ付きの部屋で常時監視されたのはプライバシー権の侵害だとして、国に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁（西村康一郎裁判長）は25日、国に55万円の賠償を命じる判決を言い渡した。 　判決によると、男性は殺人罪などで2013年に死刑が確定。一審で死刑判決を受けた07年から22年の間、天井にカメラが設置された東京拘置所にある3畳半ほどの「テレビ室」に入った。 　判決は、テレビ室への収容は24時間体制で全てが監視されていると収容者に感じさせ、排泄（はいせつ）時に陰部が映る可能性がある点もふまえ「プライバシー制約の程度は極めて強い」と指摘。「死刑確定者にも、刑事施設の長の裁量が無制約に認められるものではない」と述べた。 　そのうえで、死刑確定後は自殺や自傷行為のおそれが解消されつつあり、遅くとも確定から5年が経った18年4月時点では「（テレビ室での）収容継続の必要性が失われた」と判断。これ以降の収容は「社会通念に照らし著しく妥当性を欠く」として違法とし、原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料などの支払いを国に命じた。 　判決を受け、原告代理人の大野鉄平弁護士は朝日新聞の取材に「プライバシーを著しく制約するものであることを正面から認めた点、そして死刑確定後の収容を違法と判示した点は評価に値する。判決は、死刑確定者を含む他の被収容者への収容に影響が及ぶと思われる」とコメントした。法務省矯正局は「判決を精査し適切に対応したい」とした。（米田優人）