憧れの人魚になりたい―かなえませんか? 名古屋に「マーメイドスイム」のスクール、優雅な舞台の裏には厳しい練習があった
子どもの頃に憧れたマーメイドのように―。人魚の尾に見立てたフィンと衣装を身につけ、水中を優雅に泳ぐ「マーメイドスイム」のスクールが名古屋市にある。その名も「人魚の学校」。海外ではプロのパフォーマンスとして一般に知られ、ショーも開かれているが、国内の認知度はまだ低い。 【写真】「コリア国際学園」K-POPを学べるコースは生徒の大半が日本人 深夜に校舎が炎上、校舎の壁にいたずら書きも… 放課後はオーディション会場のような熱気 23年
「日本でも広めたい」。こう語るスクールの代表後藤祥子さん(44)も人魚姫に魅せられ、独学で身につけた。年齢や水泳が得意かどうかに関係なく学べるといい、夢への挑戦を後押ししている。(共同通信=吉田有美香) ▽水中を華麗に舞う 5月中旬、名古屋市天白区にある水深約5メートルのダイビングプールに、8人の「人魚」が集まった。ショーへの出演やインストラクターを目指す上級者向けのレッスンだ。両足を固定して魚の尾の形をしたフィンを装着し、その上からフリルやスパンコールで飾られた人魚風のコスチュームを着け、プールに飛び込んだ。 水中でスピンすると。それぞれピンクや黄色に彩られた尾がゆらめき、幻想的な世界が広がる。「慌てると人間らしさが出てしまう。もっとゆっくり、しなやかに」。後藤さんら講師が、泳ぎ方から指先の角度まで細かく指導した。 2人組のコンビネーション技では、水中でリング状の泡「バブルリング」を出し、その泡を追うように、回転しながら水面へ浮上する。2人が背中合わせになる場面があり、息を合わせるために練習を重ねた。
▽後悔より挑戦 後藤さんがマーメイドスイムを始めたきっかけは、2015年に交流サイト(SNS)のインスタグラムで目にした、愛好者のパフォーマンスだった。当時35歳。幼少期から人魚姫に憧れを抱いていたが、水に顔をつけられないほど水泳は苦手で、「いまさら始められるのか」と迷いもあった。 だが「やらずに終わるよりいい」と決意し、公営プールに通って、素潜りができるまで練習した。近くにマーメイドスイムの技術を習える所がなかったため、自己流で体得し、さらに民間団体が発行するインストラクター資格も取得した。 アメリカやフィリピンでは、水族館や商業施設のプールで人魚ショーがあり、エンターテインメントとして認知されている。後藤さんは日本でも魅力を広め、パフォーマンスしたい人の力になろうと、2020年に名古屋市でスクールを開いた。 ▽優雅な人魚の裏側 後藤さんは「シェリーナ」というマーメイドネームを持つ。生徒も講師も、それぞれのマーメイドネームで呼び合っている。水中カメラを観客に見立てて、投げキスやポーズを決める練習も。レッスンではそんなメルヘンな世界が広がる一方、少しでも長く潜る必要があるため、過酷な潜水トレーニングも行う。