水さえ与えられず5頭が餓死…21頭の多頭飼育現場から救われた秋田犬が怯えたもの
2023年9月、劣悪な環境で犬を飼育したなどとして、福島県田村市に住む58歳の自称会社員の男性が動物愛護法違反容疑で逮捕された。 9月7日の読売新聞オンラインによると、同年5月中旬~8月下旬、皮膚病にかかった飼い犬を適切に保護しなかったほか、排せつ物がたまった室内で別の犬2頭を飼育し、虐待した疑いがあり、逮捕された男性は容疑を認めているという。 男性の自宅には多数の秋田犬が水やエサを十分に与えられず、劣悪な環境で飼育されており、「多頭飼育崩壊」の状態だった。 【写真】ハクは、5頭が餓死した多頭飼育現場から救出された秋田犬の一匹だった この現場から救出された秋田犬のうち一頭を引き受けたのが、「ワタシニデキルコト」(以下、ワタデキ)だ。 東京、千葉、福島を中心に動物保護活動や啓発活動、活動家の支援を行っている一般社団法人の動物支援団体である。 それが保護活動とは知らないまま小学生の頃から里親探しを続け、2020年に団体を設立したワタデキ代表の坂上知枝さんに、これまで出会った保護犬猫とのエピソードを語っていただく連載。 目を覆いたくなるような現場を生き永らえた秋田犬に何があったのか。そして里親は見つかったのか。ライターの長谷川あやさんの取材でお伝えする。
注意しても水さえも与えず、5頭が餓死
今回は、秋田犬のハクの物語を紹介する。坂上さんが、多頭飼育崩壊について知ったのは、2023年夏、福島の保護活動家からのヘルプ要請がきっかけだった。 「福島県で、21頭の秋田犬が多頭飼育されていて、地元の動物愛護センターが何度か飼い主宅を何度か訪問しましたが、注意しても水さえも与えず、5頭が餓死してしまったそうです。ほかの犬たちは、センターに一時保護されることに。その後、センターと警察の説得で、飼い主は所有権を放棄しました。その後、飼い主は、動物愛護管理法違反で逮捕され、ニュースでも報道されました」(坂上知枝さん、以下同) 保護当時の写真が残っているが、どの仔もかわいそうなくらいにガリガリに痩せている。保護と前後して、坂上さんに、現地の保護活動家から、「手を貸してほしい」と連絡が入り、「私たち一般社団法人ワタシニデキルコトも、まずは預かりボランティアを、その後、里親を探すことになりました」。 「飼い主は50代の男性でした。聞けば、以前も別の都道府県で、別件で逮捕され所有権を放棄したことがあったのですが、その後、すぐに知り合いに虚偽の申請をさせ、 7 頭を取り戻してしまったという経緯があったそうです」 そのため、センターは慎重にことを進めていったという。