水さえ与えられず5頭が餓死…21頭の多頭飼育現場から救われた秋田犬が怯えたもの
引き出したワタデキに「ずるい」の声も
「そんな理由から、地元の保護活動家さんとワタデキが第三者譲渡を引き受けることになりました。大きな話題になった事件だったことから多くの人が知るところになり、センターにも問い合わせが殺到。また、犬種が人気の秋田犬だったこともあり、引き出した私たちに対して、『ずるい! 』と苦情を言う団体や人も出てきたそうです」 坂上さんは、センターに保護された約2週間後に、その秋田犬たちに会いに行くことになった。 「大型で少し難しいという数頭は現地のボランティアさんたちがすでに引き受けて下さっており、私たちが会った仔はみんなとても人なつっこく、小ぶりな仔ばかり。人に対してここまでフレンドリーということは、ネグレクトなだけで手は出されていないということなので、その点に関してはほっとしました。 ガリガリで栄養失調から脱毛を発症している犬も多いと聞いていましたが、すでにセンターで2週間ほど過ごしていたこともあり、毛並みも良くなり、細身ではありましたがガリガリというほどではありませんでした。また、散歩もしたことがない仔たちだったために収容当初はリードをつけて歩くことから始めたそうですが、散歩にも慣れて広い屋外の施設を楽しそうに歩いていました」 センターの職員も、「最初はみんな餌を与えると、一気に食べつくすという感じでしたが、今ではだいぶゆっくりに、最近では少し残すくらいになりました」と言っていたという。 10月前半に引き出すことが決まり、坂上さんは早速預かりボランティアを手配する。16頭は現地や他県の秋田犬を得意とする団体や個人保護活動家が引き受け、数頭はほどなくして里親も決まった。そんななか、坂上さんが引き出すことになったのがハクだ。 「センターに会いに行った時、一番若いと思った仔でした。まだパピーの動きだったので、預かりさんには『2歳程度といわれていますが、多分、 1歳になったばかりくらいのまだまだ仔犬です』と伝えました」