【マレーシア】ライオン、洗剤市場で首位堅持 現地向け商品投入で販売拡大へ
ライオンは、マレーシアの洗濯用洗剤市場で2009年から16年にわたりトップシェアを堅持している。マレーシアの合弁会社の24年1~6月期決算は、洗濯用洗剤を含むホームケア分野がけん引し、前年同期比約26%の増収を記録。現地の生活者の嗜好(しこう)に合わせた商品を開発・販売し、さらなる成長を目指す。【笹沼帆奈望】 ライオンは、マレーシアで地場日用消費財大手ラムスーンとの合弁会社サザンライオンを通じて、事業を展開。洗濯用洗剤「トップ」、歯磨き剤「フレッシュ・アンド・ホワイト」、ボディーソープ「植物物語」などを販売している。 マレーシア国内で販売する洗濯用洗剤とボディーソープの大半は、マレー半島南部ジョホール州ジョホールバルに構える工場で生産。その他の商品は、中国など他エリアの工場からも輸入している。商品はマレーシア・イスラム開発局(JAKIM)のハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)認証を取得している。 中でも洗濯用洗剤を主力商品とし、国内市場で09年以降、16年にわたりトップシェアを堅持している。サザンライオンの岡智崇マネジングディレクターは、「合弁相手のラムスーンの広範な流通網とライオンの技術力によって、トップシェアを堅持できている」と話す。ラムスーンはマレーシア全土に販売や流通のネットワークを有していることから、スーパーマーケットやドラッグストアなどに満遍なく商品を置くことができているという。 ただ一方で、岡氏は、「今後は技術力や品質だけで競合他社と差別化を図るのは難しくなっていくと見込まれており、マレーシアの生活者の嗜好に合わせた商品の開発が必要となってくる」と指摘する。 マレーシアでは、生活者が商品を購入する際に重視する点や嗜好性などを研究し、得られた知見を取り込んだ開発を実施する。 洗濯用洗剤においては、汚れ落ちに加え、香りを重視する生活者が多いことから、香りにこだわった「トップ マジカルインフュージョン」の販売を開始。パッケージは既存製品と一線を画す黒とゴールドを基調にし、デザインにも工夫を凝らした。 岡氏は「生活者に香りや仕上がりで期待感を感じてもらえる」とした上で、販売が伸びていると明かした。今後もマレーシアの生活者の嗜好に合わせた商品を開発・販売していく方針だ。 ■経済成長率を上回る伸び目指す サザンライオンの24年1~6月期の売上高は前年同期比26.3%増の105億8,000万円。分野別の売上高の構成比率は、ファブリックケアやリビングケアが含まれるホームケアが67%、オーラルケアが13%、ビューティーケアが11%だった。 岡氏は「マレーシアでは経済成長率が高く、インフレ率や失業率は低い傾向にあり、景気が安定していることから消費が拡大した」と説明。春節(旧正月)やイスラム教のハリラヤ・プアサ(断食明け大祭)の祝祭に合わせた店頭でのプロモーション強化も売上高の伸びに奏功したという。 オーラルケアでは、歯磨き剤のシェアを拡大。岡氏は、マレーシア向けに開発した歯磨き剤ブランド「フレッシュ・アンド・ホワイト」の販促強化、マレーシア保健省と共同で展開する歯磨きの啓発プログラムがシェア拡大を後押ししたと分析する。イスラム社会で「歯ブラシの木」として親しまれてきたミスワクを配合した商品など、現地に合った商品を取り扱う。 ビューティーケアでは、主力商品の1つであるボディーソープ「植物物語」の改良を実施。ボディーソープのシェア拡大につなげた。 岡氏は、マレーシア事業の今後について、中長期的な成長を期待していると指摘。「業績では、マレーシアの国内総生産(GDP)成長率を上回る伸びを目指す」と述べた。 ライオンは1960年にマレーシアに進出。87年にラムスーンとサザンライオンを設立した。ライオンは現在、マレーシアのほか、タイ、シンガポール、中国、韓国などに拠点を構える。