2030年でも未完了…東京都を取材「なぜ浄水場の耐震化は進まないのか」:放置された浄水場の耐震強度不足(2)
都水道局は「トータルで判断してきた」と主張
こうした疑問について、私たちは、東京都庁で2回にわたって水道局の担当者に直接話を聞き、その後さらに文書で3回質問し、回答を得ている。直接取材に答えたのは、水道局総務部と浄水部の施設計画や浄水場の維持管理にかかわる担当課長たちだ。 まず、複数の浄水場で耐震強度が不足している点については、「マスタープランなどに耐震化工事の計画が載っているところは、耐震診断を実施して、結果が悪かったところだと認識していただいて構いません」と認めた。 浄水場への耐震診断は、阪神・淡路大震災をきっかけに1997年度に水道施設の耐震基準が改定されたことを受けて98年度以降、断続的に実施しているという。今回の取材で判明しただけでも2001~04年度と2013~16年度に実施していた。 つまり、少なくとも10年ほど前、場所によっては約20年も前に耐震性の不足が判明していたことになる。それなのに、東京都全体の浄水施設能力の8割を占める朝霞、金町、東村山、三郷の4大浄水場のなかで2030年度にも耐震化工事が完了せず、完了予定時期すら明記されていない箇所もあるのだ。耐震診断から10年、20年……後回しにするにもほどがあると言わざるを得ない。 組織内では完了予定が決まっているのかと尋ねても、担当者は「お答えできません」と口をつぐむ。なぜ、耐震化工事の完了をもっと早めることができないのか。 こうした疑問を投げかけると、担当者は、次のように説明した。 「ご指摘されたような場所を耐震補強しなければいけないというのはわれわれも分かっていますし、今やっているところですが、工事なのでどうしても時間がかかります。同時期に高度浄水処理の導入もやっていましたし、地震対策も配水池の耐震化や配水管の耐震継手化などから優先順位をつけてやってきました。財政的な問題もありますし、水道局としてトータルで判断しているということです」 担当者の話に出てきた高度浄水処理とは、通常の浄水処理にオゾン処理や生物活性炭処理といった工程を加えることで、水に残った化学物質やにおいを除去した「安全でおいしい水」の提供が可能になる仕組み。1989年から始まった工事はその後、約四半世紀を経て、2013年に利根川・荒川水系の全浄水場での導入が達成された。これはこれでありがたい話ではあるものの、かといって、都民の命にもかかわる浄水場の耐震化工事がそれによって遅れてもいいとは到底思えない。 それでも、この水道局の担当者が答えるように、浄水場から送られた水を一時的にためておく配水池の耐震化工事はこの間、優先的に進められてきた。東京都の地下に張り巡らされた配水管の継ぎ目が外れてしまうことを防ぐ「耐震継手化」も、避難所や病院などの重要施設への水供給ルートを優先して進められ、現在約50%が完了しているという。50%という数字の評価は置いておいても、こうした対策が進んでいることは確かなのだが、そもそもそうしたネットワークに水を供給する源である浄水場の耐震化が改善されないのでは、本末転倒である。