希少生物を捕食する「野猫」の脅威、国の特別天然記念物も被害に
鹿児島県の徳之島で1月18日、国の特別天然記念物「アマミノクロウサギ」がノネコ(野猫)に捕食される姿が撮影されました。ノネコ被害について、環境省自然環境局は「特に、島しょ部の希少生物への影響が心配される」と懸念します。強い肉食動物がいない島しょ部で、ノネコは生態系ピラミッドの上部に位置し、その地に生息する動物の脅威となっているのです。 アリゲーター・ガー、ピラニアなども棲息 外来種の宝庫と化す多摩川
危惧されるノネコ被害、ノラネコどう違う?
ノネコは、人間に飼われていたが野生化し、自力で生きるようになったネコを指します。ノネコは鳥獣保護管理法の施行規則でイノシシやタヌキと同じ狩りが可能な「狩猟鳥獣」に定められているのに対し、ノラネコやイエネコは人に依存して生きるネコで、動物愛護管理法で「愛護動物」と定められており、むやみに傷つけると罰則があります。 北海道の天売島(てうりとう)ではウミスズメ、東京都の小笠原諸島ではアカガシラカラスバト、鹿児島県の奄美大島や徳之島ではアマミノクロウサギなどへの被害が危惧されるほか、長崎県の対馬ではツシマヤマネコ、沖縄県の西表島ではイリオモテヤマネコにネコエイズウイルスを感染させるケースもあるそうです。
島しょ部で進むノネコ対策
対策は各地で進められており、小笠原諸島では、国や地元自治体らによるノネコの捕獲を実施。捕獲したノネコは、東京都獣医師会の有志が運営する動物病院に運び、人に慣らす訓練を行ったあと、新しい飼い主を探して譲渡しています。 父島では2010年段階で約200頭だったのが、一時は10~20頭にまで減りましたが、捕まっていない個体が子供を産み、現在は40頭ほどに戻っているそうです。環境省の小笠原自然保護官事務所は「少なくなれば捕獲効率が下がってしまう」と難しさを語ります。数が減ると生息密度が下がるので、捕まえにくくなるのです。 2014年度の段階で600~1200頭のノネコがいると推定されている奄美大島では、これ以上ノネコになるネコを増やさないため、奄美市を含む地元自治体がノラネコに不妊・去勢手術を実施。2013年から16年3月末までに計722頭のノラネコに手術が行われました。 ノネコ自身はただ生きようとしているだけであり、大きな責任は野に放ってしまった人間の側にあります。捕まえて数を減らす取り組みとともに、そもそも生み出さない取り組みの両方がノネコ対策に必要です。 (取材・文:具志堅浩二)