「今後の日本のドラマの方向性を示唆」…タブーに挑戦する朝ドラ『虎に翼』が担うNHKの特殊事情
挑戦しなければならない「NHKならではの3つの理由」とは……
生理、LGBT問題、原爆……などさまざまな社会問題をストーリーに織り込んでいることが話題となっている朝ドラ『虎に翼』。これまでの「朝ドラ」ではタブー視されていたテーマや事象にここまで果敢に挑んでいるのはなぜなのか? 老け役もハマった石田ゆり子…白無地Tシャツにチノパンシンプルコーデで”アラフィフかわいい”姿 テレビ東京でドラマ・プロデューサーを務め、現在は桜美林大学芸術文化学群の教授である田淵俊彦氏は、そこには「NHKならではの3つの理由」があるという。 ①視聴率を気にするため ②地上波の単一の番組だけではコンテンツの運用が厳しくなってきたため ③公共放送としてのステイタスを顕示するため 後編では、②③について解説する。 ◆番組を「コンテンツ」として「運用」し、何度でも「こする」……!? 次に、②の「地上波の単一の番組だけではコンテンツの運用が厳しくなってきたため」について解説したい。 これは①の「視聴率を気にするため」と密接な関係がある。NHKであったとしても視聴率を気にする理由は前述の通りだが、その一方で視聴率の下落には歯止めがかからない。地上波離れが進み、配信との闘いに敗れたテレビ局はひとつの番組を放送して満足している場合ではなくなってきた。番組を「コンテンツ」として「運用」し、何度でも「こする」ことができるものに仕上げなければならない。 今年の5月17日の参院本会議で、NHKにインターネット業務を義務づける改正放送法が可決、成立したことが大きな引き金となった。今後、ネットによる視聴も受信料徴収の対象となる。受信料収入が先細るなか、このチャンスをつかめるかどうかが命運を分ける。 この商機を逃すわけにはいかない。それは、「地上波⇔配信」という2つの道の岐路に立つNHK自身が一番感じていることだろう。 だからNHKは、配信に回しても応用、運用してゆけるネタやテーマをドラマに織り込むことで、ほかの番組やプラットフォームでも取り上げやすくしているのだ。 ◆「夢」を描いていては視聴者の興味をひくことはできない…… 例えば、「生理」ネタは過去には『ハロー!生理 世界で聞いた5つのストーリー』というドキュメント番組(’21年放送)やドラマ『生理のおじさんとその娘』(’23年放送)、『あさイチ』(’19年11月27日放送)の「みんなで語ろう!生理・閉経のモヤモヤ」、『クローズアップ現代』(’21年4月6日放送)においても新型コロナウイルスの感染拡大による家計の困窮によって生理用品を十分に購入できない女性を浮き彫りした「生理の貧困」として取り上げられた。