「今後の日本のドラマの方向性を示唆」…タブーに挑戦する朝ドラ『虎に翼』が担うNHKの特殊事情
ドラマだからこそ表現できる「事実」
〝NHKならでは〟の事情があるとはいえ、それらのテーマをうまくストーリーに織り込み、視聴者の大きな支持を得る作品に仕上げることができているのは、現場の作り手たちの功績である。 そこには「たゆまぬ努力」や「熱い思い」がある。ネットなどには「社会問題をエンタメに乗っけるな」という批判も散見される。 しかし、過去の実話を題材にしながら「今」を描くことはエンタメの真骨頂と言っていい。 それは「なぜ、事実を描くのにドキュメンタリーという手法を使わずに、ドラマで見せるのか」という問いの答えを考えてみればわかることだ。 ドラマだからこそ表現できる「事実」もある。吉田脚本の凄さは「エンターテインメントを担保しながらNHKが求めるテーマを実現したことだ。 NHKの事情をそのまま描いてしまうと、目も当てられないものになってしまう。生きづらい人たちや当事者が声を上げたりすることをダイレクトに描くと、「無理に誘導している」「政治的な意図を伝えるのにドラマを使っている」と非難される。 しかし、そんな声をものともしないパワーがこの作品にはあった。逆に、もしそんな声があったとすれば、それを白日の下にさらすことができたことが『虎に翼』の最大の意義ではないだろうか。 9月27日の最終回は、「晩年になっても寅子の本質、コアな部分は変わらないというところに持っていきたいのが吉田さんの思い」と番組プロデューサーは語っている。ブレない姿勢……それがどう表現されているか、楽しみだ。 取材・文:田淵俊彦
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