なぜ夫婦は「細かいこと」で大げんかするのか、イライラを解消する「シンプルな理由」
家庭を経営の場と考えれば夫婦喧嘩を激減できる!
まずは最も身近な「家庭」を経営概念によってとらえ直すことで、夫婦間の揉め事によるイライラの解消を試みてみましょう。 夫が中身をちょっと残したコップをところかまわず置いておくことにイライラしている妻がいます。一方で夫は、すぐ片付けるつもりだったコップの存在になぜ妻がイライラしているのかがわかりません。 この「ちょい残しコップ散乱問題」を、妻と夫それぞれの要求から読み解くとこうなります。 ・妻の要求:片付け対象が放置されていると気が休まらないから、常に整理整頓された状態を保ちたい(=整理整頓する) ・夫の要求:常に家の整理整頓に気を配っていたら気が休まらないから、何も考えずに過ごしたい(=整理整頓しない) こうして並べると、「整理整頓する/しない」という、一見、両立が難しそうな要求が存在していることがわかります。 しかし妻と夫の両者とも「家では気を休めたい」という目的では共通しているのです。 「他者と自分を同時に幸せにする」という価値創造のマインドから、この問題をどのように解決すればいいでしょうか? ポイントは、「家では気を休めたい」という両者共通の目的に対してフォーカスして「きっと価値創造によって問題は解決できる」と考えることです。 妻が気を休めるためには「物が散らからない」ことが大事。 夫が気を休めるには「余計なことを考えずに過ごす」ことが大事。 ならば、「余計なことを考えなくても物が散らからない」という状態を作り出せば、両者の目的を同時に達成できそうですね。 例えば、私が実践した例ですが、夫は家ではマイ水筒やマイボトルを首からぶら下げてすごし、それだけを使うようにすればどうでしょうか。かなり間抜けな格好にはなりますが、余計なことを考えなくても物が散らかることはなくなります。 もう少しお金に余裕があれば、週末は家事代行サービスを外注するという選択肢もあるでしょう。 妻と夫の両立しないような要求も、家庭を経営の場と考え、価値創造のマインドに立脚すれば、どこかに問題解決の糸口が見つかるのです。しかもこれは「妥協の産物ではない本質的な問題解決」です。普通は、妥協して家庭において力の弱い方が何かを我慢しますね。それに対して、価値創造のマインドを持てばみんなが幸せになる道が見つかるのです。 もう少し掘り下げて考えると、「ちょい残しコップ散乱問題」に表れた夫の失態は、妻に「母の役割」を求めているために引き起こされます。 男は独立して自分の家庭をもつまでは、母子関係に依存して過ごしてきます。母子関係において、子でいること自体が母への価値提供になっているため、子は小さいうちには家庭内で問題解決するインセンティブを持つ必要がありません。 しかし結婚して、妻と同等のパートナー関係になればそうはいきません。夫の存在そのものは妻への価値提供になりませんから、家庭内でも問題解決する努力が必要なのです。 問題解決への努力があってはじめて顧客満足、つまり妻との良好な関係が保たれる。このように心すべきでしょう(もちろん夫と妻が逆になっても同様です)。 これが、本来の経営概念によって個人と社会(家庭)を豊かにすることであり、経営によって日常生活のイライラを減らすことができると述べた意味なのです。 何よりも私自身が、こうした経営の考え方をもとに家庭内の問題に対処するようにした結果、夫婦喧嘩が激減しました。だからその効果は誰よりも実感しているつもりです。 つづく「老後の人生を「成功する人」と「失敗する人」の意外な違い」では、なぜ定年後の人生で「大きな差」が出てしまうのか、なぜ老後の人生を幸せに過ごすには「経営思考」が必要なのか、深く掘り下げる。
現代新書編集部