女優歴42年・介護職歴18年の北原佐和子。畑違いのダブルワークと思いきや…「女優と介護の仕事はとても似ている」
◆プライベートな時間 仕事が立て込んでくると、プライベートな時間はほぼなくなりますが、睡眠時間が確保できれば大丈夫。 でも、自分の時間は絶対必要ですから、仕事帰りに好きなカフェに寄るなどして、うまく調整しています。 丸1日休めなくても、仕事のすき間時間に映画を見たり、ちょこちょこと気分転換ができればOK。私はそれで十分リラックスできるのです。 そうそう、ふたつの現場でのお化粧は、まったく変えています。介護のときは、目がきつくならないように、アイライナーは引きません。 今、女優業を辞めているわけではないのですが、介護の仕事に集中していて、なかなかスケジュール的に厳しくなっています。 でも、演じることはすごく好きなので、この先もご縁があれば、やり続けていきたいと思っています。
◆女優のコミュニケーション力が介護の仕事にも大いに役立つ 女優として、さまざまな現場でさまざまな方々とコミュニケーションを重ねてきた経験は、介護の仕事に生かされているのでしょう。 たとえば介護の現場のスタッフに言わせると、「頑固なおじいちゃん」という方がいるとします。 その頑固なおじいちゃんへの対応は、舞台の演出家や映画監督がひとつの演技に何度もNGを出すのに対して、あの手この手で創意工夫をし、OKをもらうのととても似ています。 また、「ごはんを食べたくない」「お風呂に入りたくない」と訴える方がいたとき。 その原因を探るとっかかりを見つけるため、アンテナを張りめぐらせて引き出しをたくさん作り、「この人はどんな話が好きかな」ということを考えます。それらを手がかりにコミュニケーションを始めるのですね。 奥さんがきれいな方だったら、「きれいな女性がお好きなのですね」「もしかしてもしかして、ウワキの経験、あったりして……」と少しくだけた話もしてみます。 するとニヤッとして、頑(かたく)なな表情が溶けていくのです。そして、どんどんご自身のことを話してくださいます。 そういうコミュニケーションが本当に楽しくて仕方ありません。 相手の方が心の扉を開いてくださった瞬間、「この仕事をしていて、よかった!」と実感します。 ※本稿は、『ケアマネ女優の実践ノート』(主婦と生活社)の一部を再編集したものです。
北原佐和子
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