日産スカイライン2000GT-R(昭和44/1969年2月発売・PGC10型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト049】
この連載では、昭和30年~55年(1955年~1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第49回目は、GT-Rの原点となる日産スカイライン2000GT-Rの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より) 【写真はこちら】 写真は前期の初期型で、後期型とフェンダーミラーやラジエターグリルの造形が異なる。(全9枚)
勝つために生まれた初代ハコスカGT-R
3代目GC10型のスカイライン2000GTを発売した直後の昭和43(1968)年10月、東京・晴海の国際貿易センターで第15回東京モーターショーが開催された。日産ブースで人々の熱い視線を集めたのが栄光の赤バッジを付けた参考出品車「スカイライン2000GT(レーシングタイプ)」だ。 「プロトタイプ・レーシングカーであるニッサン(プリンス)R380のエンジンを搭載」という触れ込みで、会場はセンセーショナルな雰囲気に包まれていた。車名に「R」の紋章こそ付いてはいなかったが、まさしくこれは「GT-R」のプロトタイプだった。 正式発表は翌昭和44(1969)年2月21日、「スカイライン2000GT-R」の車名で市販に移されている。型式はPGC10だ。外観は2000GTに準じたデザインだが、バンパーからオーバーライダーが外され、リアフェンダーのサーフィンラインはワイドタイヤを履けるようにホイールハウスの部分がカットされている。 タイヤは2000GTと同じサイズだが、 6.45H-14-4PRと高速走行に耐えられるものを装着。フェンダーミラーはメッキ仕上げの砲弾型ミラーに替えられている。 インテリアも2000GTとほぼ同じだが、タコメーターはフルスケール1万rpmとなり、7500rpmから上がレッドゾーンだ。ウッドリムのステアリングのセンターパッドは赤く塗られている。フロントシートは本格的なバケットシートで、ドライバーズシートにはヘッドレストと3点式シートベルトを装備した。先代スカイラインGT-Bと同じく、走りとは関係ないラジオとヒーターはオプションというスパルタンな仕様だ。 搭載するエンジンは、旧プリンスの設計陣が開発を手がけたS20型直列6気筒DOHCで、これは日本初の市販DOHC24バルブエンジンだった。前述のニッサンR380に積まれ、レースで活躍したGR8型の血を引くだけに、基本的なレイアウトは同じ。 だが、公道での使用を考慮してカムシャフト駆動をギアのみからギアとダブルローラーチェーンの併用に改め、オイル潤滑もウエットサンプ式に変更されている。 エキゾーストマニホールドはタコ足形状のステンレス製で、点火系もフルトランジスタが奢られた。排気量は1989ccで3基のソレックス40PHHキャブを装着し、当時2L最強の160ps/7000rpm、 18.0kgm/5600rpmを絞り出す。 トランスミッションはポルシェシンクロの5速MTだ。1120kgのボディを軽々と200km/hの世界に誘い、0→400m加速は16.1秒を叩き出す。サスペンションは2000GTと同じ形式だが、もちろん強化されている。リミテッドスリップデフも標準だ。 昭和44(1969)年8月、基準車と共に初のマイナーチェンジを行う。この時期からスカイラインは『愛のスカイライン』のキャッチコピーを使うようになる。 外観では、グリルとヘッドライトが3分割構造だったフロントマスクが、ヘッドライトの外側からグリルまでをメッキモールで囲んだワンピースデザインになる。また、サイドマーカーランプのデザインを変え、砲弾型ミラーはブラック仕上げとなった。前後のGT-Rエンブレムも微妙に異なる。 4ドアGT-Rは長方形のリアコンビネーションランプを採用しているが、ランプの外枠が金属からポリプロピレンになり、バックランプのデザインも変更された。ガーニッシュも黒の艶消し塗装だったものが革シボ風の処理を施したものになる。 インテリアでは本革巻きステアリングの採用が目をひく。また、センターコンソールのシガーライターやウォッシャースイッチなどは絵文字表示になった。 そして昭和45(1970)年10月、2ドアハードトップが登場すると、4ドアセダンのPGC10型GT-Rは廃止され、その地位を2ドアハードトップのKPGC10型GT-Rに譲ることとなる。 若干、KPGC10型の陰に隠れている感はあるが、昭和44(1969)年の日本グランプリの前座レースでは1位から8位までを独占するなど、その活躍は忘れられない。
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