「次のアップル、ネトフリ」と呼ばれた海外〝ユニコーン〟の栄光と没落の理由 「再建」成果強調も展望は?
ペロトン減速した2つの原因
主な原因は、やはり「リアルのフィットネスジムに人が戻った」ことだと言えるでしょう。新型コロナウイルスへの人々の警戒が弱まったのと時期を同じくして、ペロトン社は21年にそれまでの急速な売上増から一転、減収が続きました。 コロナ禍でペロトン社は成長路線を描き続けていたため、事業計画との乖離は甚大でした。需要の減少とそれに伴う業績の悪化を受けて、22年2月に共同創業者のジョン・フォーリー最高経営責任者(CEO)が退任、ネットフリックスやスポティファイで最高財務責任者(CFO)を務めたバリー・マッカーシー氏がCEOに就任しました。 バリー氏の体制で、物流部門を中心に従業員の2割に当たる2800人を人員削減し、米オハイオ州で23年に完成予定だった新工場の建設計画も取り止めました。この頃、米アマゾン・ドット・コムやナイキによる同社の買収検討が報じられ、アナリストの中にはアップルによる買収の可能性を予想する人もいました。 もう一つ、ペロトン社の業績に影響を与えたのが、製品リコールへの対応の遅れでした。米消費者製品安全委員会が調査したところ、同社のトレッドミルの不具合により、ユーザーがベルト部分に巻き込まれる事故が多発しており、子どもの死亡事故を含む150件以上の事故があったことがわかりました。 同社は対応の遅れを謝罪し、21年5月に12万台以上のリコールを実施することに。23年5月にはバイク約220万台のリコールも発表。株価も大きく下落しました。乱高下を続ける株価に、信用も失われていきます。このように、「新興企業ゆえの製品の安全管理や対応の不備」もまた、ペロトン社の減速の原因だったとみることができるでしょう。 24年4月には、バリー氏もCEOを退任。あわせて従業員の15%に当たる400人の追加削減や、小売店舗の閉鎖が発表されました。こうした再建計画の効果か、8月に発表された最新の24年4~6月期決算は市場予想を上回る売上高でした。 同社はこの結果を「特に誇りに思う」とコメント。「収益性の向上は、コストを事業規模に合わせることに引き続き注力していることを反映している」として再建計画の効果を強調し、「引き続き支出の最適化に取り組んでいく」としました。一方で、7~9月の決算は予想を大きく下回る厳しい見込みとなっており、同社の苦しい状況は続きそうです。