なぜスターバックスの「急激な拡大」は失敗に終わったのか…成長を一直線に目指した企業の末路
■成長をあまりに加速させると、細胞組織を損傷させる 原因は特に複雑なことではない。成長をあまりに加速させると、細胞組織を損傷させてしまいかねないのだ。 また同チームによると、そうした成長の加速は、「本来、損傷した生体分子の維持や修復に使われるべき能力を流用することによってのみ可能となる」という。 反対に、成長を遅らせると、「維持や修復に使われる能力の割り当てを増やすことができる」という。 「急いで製造された機械が、慎重に念入りに組み立てられた機械よりも早く故障するのは充分に予想できることだろう。我々の研究は、これが体にも当てはまることを示している」と、共著者の一人のニール・メトカーフは述べている。 成長するのはよいことだ。小さいままだと結局は食べられてしまうのだから。 しかし、無理やり成長させたり、成長を加速させたり、人為的に成長させたりするのは、逆効果になりやすい。 ■価値は「忍耐」と「希少性」から生まれる ロバート・グリーンはこう書いている。 「創造性を妨害する最大の邪魔者は、あなたの焦りである。つまり、過程を急ぎ、手っ取り早く形にして世間の評価を得たいという、人間なら誰しもが持つ欲求である」 このトピックで重要なのは、恋愛、キャリアから投資まで、素晴らしい価値があるもののほとんどは、忍耐と希少性という二つから得られるということだ。価値あるものにまで育てるための忍耐と、その忍耐の結果、作られた希少性だ。 にもかかわらず、人々が素晴らしいものを追い求めるときに実際によく使っている戦術は何か? 手っ取り早く形にしよう、もっと拡大させようと躍起になることだ。 そこが常に問題だったし、これからも問題でありつづけるだろう。 ---------- モーガン・ハウセル コラボレーティブ・ファンド社 パートナー ベンチャーキャピタル「コラボレーティブ・ファンド社」のパートナー。投資アドバイスメディア「モトリーフール」、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の元コラムニスト。米国ビジネス編集者・ライター協会Best in Business賞を2度受賞、ニューヨーク・タイムズ紙Sidney賞受賞。優れたビジネス・金融ジャーナリズムを表彰するジェラルド・ローブ賞のファイナリストにも2度選出されている。妻、2人の子どもとシアトルに在住。著書に、全世界累計600万部のベストセラー『サイコロジー・オブ・マネー』(ダイヤモンド社)がある。 ----------
コラボレーティブ・ファンド社 パートナー モーガン・ハウセル