横浜DeNAは”ハマの番長”三浦新監督で勝てるのか?
だが、チーム得点の516、得点圏打率の262はリーグ3位。併殺打数の94もリーグ3位で、優勝した巨人の80からは大きく引き離されている。つまり打線のポテンシャルが生かされていなかった。効率よく打線が機能していなかったのである。 単純に盗塁数がイコール機動力というわけではないが、盗塁数の31と犠打の51はワースト。走れる選手が限られていたこともある。だが、これはベンチワークが工夫の少ない「打つだけ野球」だったことを示す。ラミレス野球の象徴とも言える「8番・投手」が裏目に出て空回りしたケースも目立った。偏ったデータ主義も影響したのかもしれない。三浦新監督が会見で、「持てる力を最大限に発揮させたい」と繰り返した理由は、そこに手をつけて効率を高め、攻撃バランスを改善できれば、4位という結果には終わらないとの確信があるからだろう。 三浦新監督は2軍監督としてはバントや盗塁を積極起用してきた。 機動力の強化について聞かれ、「必要に応じてやっていく。あまり決めつけて“これ”という固執ではなく、柔軟な姿勢で、そのとき状態のいい選手をしっかりと見極めてやっていきたい」という考えを明かした。 ただ三浦新監督に求められるのは、投手陣の整備と、継投、中長期の起用の見極め、若手の育成だろう。チーム防御率の3.76はリーグ3位だが、クオリティスタート率の40.83はリーグ5位。つまり先発陣が責任を果たせていなかった。ラミレス監督の早めの継投策も影響しているのだろう。オープナーとして中継ぎのパットンを先発させるなどの不可解な投手起用も目立った。守護神の山崎の不調を見極めて三嶋へ切り替える判断も遅かったし、山崎をずっと1軍においていたのも疑問だった。 三浦新監督は現役時代には先発完投にこだわっていた。 「先発投手陣にそれを求めるのか」と質問された三浦監督は、「選手個々の能力、タイプがあるので、選手が持っている力をどのようにすれば最大限に発揮できるのか。完投能力があれば、そこを求めていく。短いイニング、4、5日で回れるなら、そこを求めていく。先発だからこうしなければいけないというものはない」という考えを述べた。至極全うな答えである。 三浦新監督は「ヨコハマナンバー」とされた準永久欠番である18を返上。背番号を「81」に替え、そのエースナンバーを空き番にした。 それが何よりのメッセージである。 今季は先発陣で2桁を勝ったのは大貫一人。エースの今永が故障で離脱、先発2枚看板として存在感を示していた平良も故障で戦列を離れた。新人左腕の坂本も初登板初勝利の後に怪我。苦しい先発事情の中で奮闘した井納が6勝、浜口が6勝と勝ち星を伸ばせなかった。 「18はマウンドの上で投げるからこそ輝く番号。選手がつけるのが一番。この機会に替えさせてもらった。全員が全員、(18を)つけたいと思っているわけではないだろうが、そういう番号をつけたいという選手に出てきて欲しい。僕(が指名する)というより、応援してくれるファンの空気感で(誰がふさわしいか)わかる」 巨人の菅野、中日の大野のような絶対的なエースを育てたい。「18」争奪戦を掲げたのはそういう決意の表れだろう。チームに足りないものをあえて「得点力アップ」としたのは、逆に言えば、投手陣整備への自信の裏返しかもしれなかった。 2軍監督として若手の可能性を知っているのも三浦新監督の強みだ。 「若い選手にいい選手がいた。だが、ファームで結果を残しても1軍でなかなか結果が出ない。1軍の壁は本人たちがわかっている。(若手が)出てきて欲しいし出てこないとダメ。競争をどんどん激しくしないとチームは強くなっていかない」 ロペス、パットンが退団。梶谷、井納らFA選手の動向などの不安要素もある。ソトの残留もまだ決定していない。だが、“ハマの番長”は明るくこうファンへ呼びかけた。 「感動を与えるというより、ファンと一緒に戦って、一緒に感動して、一緒に喜びたいなと思っている。みなさんの力を貸して下さい。お願いします」 秋季キャンプから三浦ベイスターズが始動する。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)