決済の規制改革が山場へ、ポイントや電子マネー、暗号資産はどう変わる?
近年急速に発展・拡大してきたフィンテックに対し、これまでの規制体系は「ゆるめ」の運用でした。しかし、政府はここに来て、利用者保護や不正利用防止のための制度整備に本腰を入れようとしています。ポイント払いや電子マネーを支える事業者が破綻した場合の資金返還や、ステーブルコインの発行に関するルールを見直す方向で議論が進められているのです。これにより、どのような変化が起きるのでしょうか。 【詳細な図や写真】10年余りで規制の枠組みは目まぐるしく変化してきた(出典:金融庁「金融審議会 資金決済制度等に関するワーキング・グループ資料 第1回」)
銀行が破綻しても預金は守られる。でもポイントは…?
身近な暮らしに浸透しつづけているキャッシュレス決済。でも万が一、サービスを提供している会社がつぶれたら、一生懸命に貯めた電子マネーやポイントはどうなるのでしょうか。 仮に銀行がつぶれる場合であっても、銀行に預けた預金を一定程度、保護する仕組みがあります。 銀行というシステムの長い歴史の中で、金融機関側の都合で利用者が突然に無一文になるような事態を避けるためのルールが細かく整備されてきたのです。 一方で、近年急速に普及したキャッシュレス決済は、銀行など伝統的金融界からみたら「ぽっと出」の存在であり、利用者を守るルールも完成形とはいえません。 もちろん今の時点で、「××Pay」「〇〇ポイント」の運営会社が倒産するような事態は想像しにくいかもしれません。実際、これまで資金移動業者が破綻した事例はありません。 しかしキャッシュレス決済が今後も長く生活のインフラとして定着していくとすれば、何か起きてからではなく、できるだけ早いうちに手を打っておくことが大切でしょう。
キャッシュレス決済の利用者を守る仕組みを強化へ
こうした観点から、政府は利用者保護のためのルール強化に向けた検討を進めています。このほど、首相の諮問機関である金融庁の有識者会議(金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」で、いざというときに利用者にできるだけ早くお金を返す仕組み作りの方向性が固まってきました。 キャッシュレス決済の仕組みを支えるのは、2010年に法律上で正式な業種として認められた「資金移動業者」です。よく使われるQR決済や電子マネー、主要なポイントサービスも、多くの運営企業が資金移動業者として登録されています。 資金決済法ではすでに、資金移動業者が経営破綻した場合、利用者の残高が確実に返金できるようにルールが定められています。資金移動業者は、利用者から預けられた資金全額を保管しておくよう義務づけられていて、いざ破綻した時には、保管しておいた資金を、国が代わりに各利用者に還付するといった仕組みです。 資金の保管方法としては、法務局などへの「供託」か、銀行などとの「保全契約」、そして信託会社との「信託契約」の大きく3パターンがあります。このうち保全契約と信託契約については、裁判所が保全処分を決めたあと、供託の手続きへと一本化されます。 民事再生や破産手続きの申し立てから、実際に利用者へ返金されるまでに、最低で約170日ほどのタイムラグが発生してしまうのが現状です。 このタイムラグを解消し、できるだけ早くお金が戻ってくるような仕組み作りに向け、議論が進められています。具体的には、これまでの供託手続きの返還の仕組みを残しつつ、それとは別に、銀行や信託会社から直接、利用者にお金を還付できるルートを創設する案が浮上しています。