Ⅰ期乳がん、術後薬物療法で倦怠感 苦痛は本末転倒、休薬も がん電話相談から
今回の「がん電話相談」は、Ⅰ期の乳がんで術後のホルモン療法による体調不良に悩む70代女性に、がん研有明病院院長補佐で乳腺内科部長の高野利実医師がアドバイスします。 ──令和4年、検診で右乳房にしこりが見つかり、乳がんと判明。診断は腫瘍径1・6センチ、ホルモン受容体陽性、HER2陰性でルミナル型のⅠ期で、同年11月に乳房部分切除術とセンチネルリンパ節生検を受けて、リンパ節転移はありませんでした。オンコタイプDX(再発リスクを判定する遺伝子検査)のスコアは13と低値でした。 「術後の治療は?」 ──再発予防のための術後ホルモン療法として、アロマターゼ阻害薬のアナストロゾールを5年間の予定で開始しました。内服開始後、だるさ、ほてり、頭痛、関節痛、食欲低下などがあり、体重は2キロ減りましたが、1年半は治療を継続。ただ今年6月、右膝の強い痛みや皮膚の異常も出てきたため担当医と相談して服用を中止しました。 「中止後の状態は?」 ──中止して10日後につらかった症状は大体解消しました。その後の体調はよく、9月の検査では乳がんの再発もありませんでした。担当医からはホルモン療法を中止し、経過観察だけ行うと言われました。 「関節痛、ほてりはアロマターゼ阻害薬でよく見られる副作用です。だるさ、頭痛、食欲低下も服用中止で改善していますので、アナストロゾールの副作用だったと考えられます。アナストロゾールを再開すれば、遠隔転移の可能性は減らせますが、副作用とのバランスで判断する必要があります。副作用が許容範囲なら再開もあり得ますが『効果があってもこんな副作用は嫌』と思うなら中止がいいでしょう」 ──あの副作用はもう味わいたくありません。 「それなら無理しなくてもいいと思います。ステージIで悪性度も低く、アナストロゾールを1年半内服した状況で、今後遠隔転移をきたす確率は、5~10%程度と考えられます。アナストロゾールをあと3年半、継続すれば、この確率をさらに下げられますが、恩恵を受けるのは100人中数人程度です」 ──他のホルモン療法はどうですか?