子どものことばを育てるのに本当に必要なこと 「ことばのシャワーを浴びせる」のが正解ではない
ことばの発達に遅れがある子どもの指導を専門とする立命館大学教授の川﨑聡大教授は、1歳ごろに話し始めるより前に「ことばをどれだけ理解できているか」「コミュニケーションの基盤がどの程度育っているか」が大事だと指摘します。川﨑教授の新刊『発達障害の子どもに伝わることば』から抜粋して、乳幼児期から幼児期初期の声かけについてご紹介します。 ■子どもの「もの」へのアプローチを観察しよう 声かけというと、子どもが「話せる」ようになってからの話に思えますが、1歳ごろの始語より前から、「どれだけ理解ができているか」と「コミュニケーションの基盤がどの程度育っているか」が大事です。
でも、どうやって理解を確認すればいいのか。子どもに質問もできないし、コミュニケーションの基盤もイメージしにくいかもしれません。 「どれくらいわかっているか」から順に説明していきますね。発話がない子どもの理解も子どもの活動を観察することで確認することができます。またそこに、ことばを育てるヒントが隠れているわけです。 まず、「もの」に対してどのようにアプローチしているかです。例えば靴を見て足を出そうとする様子がうかがえれば、「履くもの」という理解ができていると判断することができます。
脱いだ服を脱衣かごに入れようとする、ごみをごみ箱に入れようとする、といった行動も大事なポイントです。電話のおもちゃを持ったときに口の中に入れようとする子どももいれば、耳に当てようとする子どももいるでしょう。当然後者は「電話を知っている」となるわけです。 生後7カ月を超えて椅子に座ることができるようになると両手が自由になり、自分で操作できるものも増えていきます。実際にこの「わかる」「使える」「知っている」がことばの基盤になります。
家庭でことばを育てるうえで大事なポイントの1つは「(イメージできない)ことばのシャワーを浴びせる」ことではなく、子どもが「面白い!」と思って注目し、そのうえで操作して「知っている」「使える」と実感できるものを増やすことにあります。 ■「イベント」へのアプローチもよく観察 また、子どもが「イベント」に対してどのようにアプローチしているかも、理解を見極めるポイントです。ルーチンのイベントとイレギュラーなイベントに分けて考えてみましょう。まず、ルーチンのイベントにはご飯を食べる、お風呂に入る、保育園に行く(微妙ですが)、といったものが該当します。