開通前の「ホンモノの高速道路」を使って実験! クルマの安全性向上に活用すべく名だたる企業がズラリ!!
10もの企業がひとつの場所で大規模実験
自動車業界では、ここ数年で急速に「自動運転」やら「コネクテッド」といった未来感溢れるワードが見受けられるようになった。 【画像】NEXCO中日本による新東名の未開通区間を利用した「路車協調実証実験」の画像を見る(55枚) また、東京モーターショー改め2023年のジャパンモビリティショーでも、そういった先進技術に関する展示などが数多く見受けられた。いま、クルマを含むモビリティ全般にかかわる上でこういった先進技術は無視できない分野だ。 今回取材で訪れたのは、静岡県小山町にて建設作業中の新東名高速における、新秦野ICから新御殿場ICの上り線、約2.8kmにも及ぶエリアの一部(工事事務所などがある場所)だ。 ここで今回、NEXCO中日本は「路車協調実証実験」と呼ばれる、日本初の試みを公開した。なんだか難しそうな話に思えるが、今後の日本のモビリティを支える上で、重要な実験が詰め込まれているのが今回の取り組みだ。 まずこの実験について簡単に説明する。これは、新東名高速の新秦野ICから新御殿場ICの約2.8kmにも及ぶ”実際の高速道路の本線”を使って、公募によって集まった10社がさまざまな実証実験を行なっているというモノ。ちなみにこの区間は2027年開通予定となっている。つまり、開通前のいまだからこそできる貴重な機会ということになる。 その実証実験では、今回訪れた2.8kmの区間と少し離れた東京方面の場所にある3.1kmのトンネル区間を使い、ユースケース1から7までのジャンルわけをした内容を実施している。それが以下だ。 ケース1:路上障害情報の後続車への提供 ケース2:路面状況や走行環境に応じた最適な速度情報等の提供 ケース3:車載センサー等を活用した維持管理情報や運行支援情報等の収集・提供 ケース4:コネクテッド車の緊急停止時における遠隔監視・操作 ケース5:交通状況に応じた情報提供による高速道路ネットワークの最適化 ケース6:交通状況に応じた車郡制御情報の提供による交通容量の最大活用 ケース7:目的地別の追従走行支援 上記のように、実際に高速道路上で発生しうるトラブルや今後必要と思われる技術などを、この場を使ってテストしているということになる。とはいえ、NEXCO中日本だけではこれらのケースをすべて実験することは到底不可能。そこで、各企業が「これはいいチャンス!」となり、集まったわけだ(参加費などはなかったようだ)。今回参加している企業は以下。 ・沖電気工業 ・KDDI ・交通総合研究所(いすゞ自動車・オリエンタルコンサルタンツ・京セラ・住友電気工業・先進モビリティ・トヨタ自動車・豊田通商・日野自動車・三菱ふそうトラック.バス・UDトラックス) ・ソフトバンク(本田技研工業・本田技術研究所) ・名古屋電気工業 ・日本電気 ・富士通 ・古河電気工業 ・三菱重工機械システム ・三菱電機 ※五十音順 これらの企業が、7つのユースケースのなかで自社の得意分野や研究している分野にかかわっているといった内容だ。なので、「当社はケース3しか扱ってません」みたいな場合もある。 今回はとくに「路車間通信」という、クルマ側のセンサーや道路上に設置されたセンサーとの通信技術の研究に重点を置いているとのこと。自動運転やコネクテッドといった技術は日々研究が行われているが、これらはクルマだけいくら進化しても、それらが走る道路などのインフラとも連携しないとじつは完璧に機能しない。クルマも道路も一緒に進化していく必要がある。 最近のクルマに搭載されている「TSPS」といった、ITS(Intrigant Transformation System=高度交通システム)を利用して信号の変化を教えてくれる便利な装備もそのひとつだ。 では、これらの実験で得たデータはどうするのだろうか。 NEXCO中日本によると、ここで蓄積したデータは、関係省庁と有識者により検討された「デジタルライフライン全国総合整備計画」におけるアーリーハーベストプロジェクトとして、新東名の駿河湾沼津SAから浜松SAの約100kmで計画されている「自動運転車優先レーン」の設定などに生かされるとのこと。「実験してそこで終わり」ということはないようだ。 この実験は2024年5月13日からスタートしており、本年7月末までの3カ月の間で行われる。 実験に必要な車両やセンサーなどの機械は各社がもち込んでおり、高速道路上に設置されているポールなどにそれぞれ場所を譲り合って取り付けている点も面白い。これらは、本線が運用される際には取り外されるとのことなので、開通後にその面影を見ることはないそうだ。ちなみにこの区間にはこういったポールが9本設置されている。