〈深刻な不漁、影響は全国で〉春の風物詩・イカナゴはどこへ行ったのか?解禁後、たった1日で休漁決定したところも
生物多様性とイカナゴ
イカナゴはシシャモ(カラフトシシャモ)などの小魚と同様に、他魚種の重要なエサにもなっています。資源が減れば、人間が獲り尽くして困るのと同様に、それを捕食していた魚種にとっても深刻な問題となります。 例えば、ノルウェーでのシシャモの漁獲枠設定に際しては、マダラなどの他魚種が食べる分も考慮して漁獲枠が設定されています。また、シシャモやイカナゴ漁に関して、マダラなどの混獲が厳しく管理されています。 日本のように漁獲枠も科学的根拠もほぼなく、資源崩壊が近づくとさまざまな理由を付けて環境や外国への責任転嫁に走るのとは大きな違いです。言うまでもなく、現状の漁業に未来はありません。 瀬戸内海だけでなく、日本全国そしてイカナゴを科学的根拠に基づいて管理しているノルウェーや欧州連合(EU)などの漁業と比較すると、減った原因とその対策がはっきり見えてきます。
海がきれいになりすぎたから減った?
海がきれいになりすぎたことが原因とも言われています。ところで、海がきれいになり過ぎたから減ってしまったのなら、江戸時代や室町時代にイカナゴはいなかったのでしょうか? ノルウェーやデンマークの綺麗な海にイカナゴが、日本より「けた違い」に多いのはなぜなのでしょうか? 同じく今年休漁となった宮城県の海も、きれいになりすぎてプランクトンが減ったから、イカナゴが獲れなくなったのでしょうか? 「魚が消えていく本当の理由」が理解されずに水産資源が減少を続けていることは、実に痛ましいことです。それらの理由が関係ないとは言いませんが、最も大きな力である、漁業という人間の力をあまりにも過少評価していないでしょうか?
大西洋と日本のイカナゴを比較してみた
下のグラフは、大西洋全体(赤の折れ線グラフ)と日本(同・青)のイカナゴの漁獲量推移を示しています。かつて1970年代の日本のイカナゴ漁獲量は、現在の大西洋全体よりたくさんありました。イカナゴ資源は環境によって年ごとに増減はします。しかしながら、大西洋の場合は増減を繰り返していますが、日本の場合は右肩下がりで、資源状態は風前の灯火となっています。 大西洋ではノルウェーをはじめ、科学的根拠に基づく漁獲枠が設定されています。また資源が減少傾向にあると「予防的アプローチ」によって漁獲量が制限されて回復を待ち、実際に回復していきます。 一方、わが国の場合は漁獲枠がないか、仙台湾のように漁獲がほぼゼロでも、漁獲枠が9700トンも設定されている(24年は休漁)など効果がある数量管理による資源管理が行われていません。