〈深刻な不漁、影響は全国で〉春の風物詩・イカナゴはどこへ行ったのか?解禁後、たった1日で休漁決定したところも
イカナゴの寿命は何年か?
イカナゴは日本では4種が生息しています。くぎ煮やチリメンのイメージからすれば、イカナゴはとても小さい魚と思われている方は少なくないでしょう。 寿命は宮城県を例にとると、一部は1歳、大部分は2歳以上で成熟する魚で、寿命は5歳以上となっています。表題の写真のように大きいものは20センチ程度に成長します。 ただし、主な漁業対象は生まれたばかりの数センチの仔魚です。イカナゴは大きくなると価値が下がり、主に食用ではなく餌料用になる魚なのです。大きく成長する前に獲ってしまえば、産卵する機会も奪われてしまいます。 日本では「成長乱獲」といって、科学的根拠に基づかずに小さな魚をどんどん獲っているので、イカナゴだけでなく大半の魚種が消えていきます。北欧など、漁業を成長産業にしている国々ではおよそ考えられないやり方で漁業をしているので、資源激減は、偶然ではなく必然なのです。来年こそはと大漁祈願をしても資源は戻りません。
イカナゴが消えていく順番を整理してみた
イカナゴが減った理由は、海がきれいになり過ぎた、海水温の上昇、砂利の採取など、さまざまな理由が付けられネットで拡散されて納得(誤解)されています。しかし、国際的な視点から分析すると本質的な原因がわかります。 根絶やしに近い状態まで獲ってしまった資源を回復させるのは至極困難であり、長い年月と厳しい漁獲制限が不可欠となります。 海水温が上昇したから魚が減ったとよく言われます。水温は魚の資源量に影響を与えます。農作物も気温の影響により出来高が変わります。ところで全国の漁場から高水温に弱いとされるイカナゴが消えて来ていますが、それなら南の漁場から消えて行くのでしょうか? しかし時系列順に整理するとそうではありません。
陸奥湾のイカナゴがほとんどいなくなって禁漁になったのが13年でした。大阪湾や伊勢・三河湾よりも北に位置している漁場が先にダメになっています。 さらに、とどめを指すように減った理由で矛盾していることがあります。13年当時、イカナゴがいなくなった理由は、何と「水温の上昇」ではなく、「水温の低下」だったという記事がありました。 イカナゴに限らず、資源が激減しているスルメイカでも、水温が高いから減っているという報告もあれば、低いからという報告もあります。 水産資源が乱獲で減ってしまったのに、それを漁業の影響ということには触れずに、無理やりに環境要因に責任転嫁されてしまい、国民がその事実を知らないことが元凶です。このためにさまざまな魚種で資源の増減に関する説明に「矛盾」が生じています。