【ガラガラの晴海フラッグ】住人の評価は「安いうえに人が少ない」 投資目的で購入した人には誤算の“賃貸に出しても借り手がなかなかいない”状況
不動産の価値はずっと上がり続ける──そんな1980年代後半の“土地神話”が脆くも崩れ去るさまを、平成の日本人は目撃した。今また、令和の日本で続く不動産価格の高騰。「バブル超え」ともいわれるこの活況もまた、終焉を迎えるのか。実際、取材を進めると、右肩上がりだった現場に異変が起きていた。【東西現地ルポ・東京編】
2020東京五輪の選手村(中央区)を改修したマンション群「晴海フラッグ」。東京都が開発し、分譲19棟(4145戸)、賃貸4棟(1487戸)に約1万2000人が暮らすという一大プロジェクトだ。 すでに分譲の17棟(2690戸)が販売され、1月に入居が始まった。高騰する都心部のマンションと比べて割安だったこともあり、申し込みが殺到したと話題になった。 だが、6月6日、NHKが〈元選手村「晴海フラッグ」3割以上の部屋で居住実態確認できず〉と報じた。「法人が一部の部屋を投資目的で取得するケースが相次ぎ、すでに多数が賃貸や転売に出されている」との内容で、晴海フラッグが空き部屋だらけだというのだ。 事業の施工者である東京都に聞くと、「6月1日時点で5400人超の住民登録があり、5月の記念式典にも多くの住民が参加した」(都市整備局)と反論。 どうなっているのか。6月上旬に現地を訪れた。 敷地内の商業施設「ららテラス」も人影はまばら。日が落ちるとさらに人気がなくなり、晴海フラッグの半分以上の戸室は電気が消えたままだ。
空室の多さから窺える「賃貸に出しても借り手がなかなかいない」
分譲物件のオーナーからの賃貸で入居中だというIT企業勤務の30代男性はこう話す。 「2LDKの部屋に犬と暮らしており、駐車場代を含めて家賃は20万円台。銀座までシェア自転車ですぐ行けるし、不便はありません。たしかにゴーストタウンと言われるような感じではありますよ。僕は在宅勤務なので静かでちょうどいいですが」 入居2か月というカップルは「大家が法人で、NHKの報道に出た(投資目的の)会社かなと話していました。他の住人とはめったに会いませんが、そのほうがいいねって。家賃は港区赤坂とかの半分くらい」と語った。 “安いうえに人が少ない”という住人の評価は、投資目的で購入した側からすれば誤算という話だろう。不動産ジャーナリストの榊淳司氏はこう言う。 「値上がりを見込んで晴海フラッグを購入した投資家は少なくないが、空室の多さからは賃貸に出しても借り手がなかなかいないことが窺えます。現在100戸ほどが早くも転売に出されており、価格は取得時の1.5倍の水準。私は、その価格で売れるかがバブル崩壊のベンチマークと考えます。買い手がつかず、売り値が取得価格を下回る原価割れになるようなら、日本の不動産バブル崩壊の始まりではないか」 (東西現地ルポ・大阪編を読む) ※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号